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異世界だと思ったらBL時空だった。 作者:赤城千
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僕の保健室へようこそ

 頭がガンガンする。
 寝不足である。
 階段で昴を押し倒してから少し睡眠を取るようにはしたが、寝不足である(2度目)。

 ……うう、冷却シート貰いに保健室に行くか。


 ガラリと、保健室の扉を開ける。

「キャア!」

 きゃあ?

 タタターっと俺の横をすり抜けて、男の子が保健室から出ていった。
 どうしたんだろ?
 ……俺が保健室に来たから逃げたのか。落ち込む。

「んー? 誰かと思えば最近ウワサの」

 おお、逃げて行かなかった人もいた! 嬉しいなー。
 でもこの人、金髪だ。ちょっと怖いな。
 ……まあ、俺なんて桃色とかいう奇抜な髪色なんだけど。

「へぇ、なかなか……こっちおいでよ」
「……なんだ?」

 呼ばれたから素直に保健室の中に入って金髪の人の前に立つ。

「はい、お近づきの印!」

 キスされた。この世界の挨拶だ。
 嬉しいな、挨拶してもらえるのって。
 元の世界じゃ、挨拶なんて家族以外としたことなかったし。

「あれ? 逃げないんだ」
「……俺が怯むと思ったか?」

 ひょっとして、俺と同じ体質なのだろうか。
 挨拶も許されない、嫌われもの体質……!
 慌ててこの世界の挨拶を返す。

「ん、ふ……へぇ? そう来るんだ」

 そう言った彼は俺の頭を抱え、今度は大人の挨拶をしてきた。
 篠木先生がやるあれだ。

 そのまま、後ろのベッドに押し倒される。

 んー? この人も、嬉しかったのかな。挨拶返されて。
 じゃあ、俺からも返さないとな!
 篠木先生と何回かしたからやり方は分かるぞ!

 彼の背中に腕を回し、ぐるりと位置を交換する。

「……え?」
「おかえし、だ」

 意を決してべろちゅーをする。
 戸惑っている彼の舌を吸い上げて、上顎を舐める。
 歯列をなぞったら、彼から力が抜けた。

「ふわ、あ、あ、待っ」
「……?」

 彼が声を上げたから一端、口を放して顔を見つめる。

 あ、この人、髪の根本が黒い。染めてるんだな。
 金髪と黒髪で、プリンみたいだな。そういえば最近プリン食べてない。

「……食いたいな」
「……!?」

 ピシリと彼が固まった。なんでだ?
 ……あっ、そういえば。

「……お前、名前は?」

 まだ名前を聞いてなかった。
 嫌われもの体質同士これからぜひ仲良くしたいです。

「長谷、川……優心……」
「こころちゃんか」
「……!」

 可愛い名前だなー。
 と思っていたら、下にいた彼の顔が赤くなっていた。

「顔が赤いぞ? どうしたんだ?」
「き、君のせい、でしょ」
「……きみじゃない。春宮咲斗だ」
「咲、斗……」

 自己紹介もしたことだし、もう一度挨拶をし直す。
 すると、今度は舌を絡めて応じてくれた。

「ン、あ……ま、待って……ヤバ、い……」
「……?」
「俺、ネコじゃな……」
「それで?」

 猫じゃないのは見れば分かるぞ? どうみても人間だ。


「うう、ううう、……降参! 降参です!」

 俺を両手でぐいっと押して、優心が俺の下から逃げた。
 そのまま、バターンと保健室の扉を開けて外へと逃げ出していく。




 うーん、折角嫌われもの体質仲間が見つかったと思ったのになー。
ウワサの転校生が現れたからちょっとからかってみようと思っただけなのに。

「あのキスは、反則でしょ……」

ヤバかった。
腰が抜けて、力が出なかった。
あのまま流れに身を任せたらどうなってたんだろう。

「咲、斗……」

ああ、胸がドキドキする。
今までどんなに可愛い子を抱いてもこんな風にはならなかったのに。

「咲斗……」

昴にも『花嫁』にも取られたくない。
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