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第三章 7: 賞金
ギルザはコペ帝国侵略軍団を主張すると、大声で宣言する。「一番最初にエルフの娘をさらってきた者に、賞金百ゴールド出す!」
それは、秘密の作戦等ではなく、森中に響く声でコペ軍全員に告知されたのだった。
「な、な、な、何だと。」森の奥で聞いていた、エルフの賢王でさえ、衝撃を受けた。
そんなエルフをよそに、コペ軍は十名ほどの少部隊を仲間同士で作り、森に入って来る。枝や樹冠を目を皿のようにしながら、隠れているエルフの娘達を探す。
根に足を折られ、底なし沼に引きずりこまれ、ツタに首を締められ。コペ軍の侵略は何百人と死人をだす。しかし、侵略は止まらない。
それどころか、先の者が罠にかかったので、後発の者たちは、その分安全に奥まで行けると、いきがう。死体の上を登り、コペ軍は奥へ、奥へと攻め入る。
「コペ帝国恐るべし。」エルフの賢王がそう呟いたが、時すでに遅し。
侵略は何時間にも及んだ。根は掘り起こされ、底なし沼は埋まり、太いツタも吊るした遺体もろとも切り落とされた。
深緑を操るエルフの力にも疲労が見えてきた。
エルフは矢を降らせコペ軍を撃退しようとする。しかし、それもコペ軍には逆効果だった。
「エルフだ!」
「エルフはすぐ、そこだぞ!」
結果的に、さらに、勢いづけてしまったのだった。この時点でのエルフの里討伐に派遣されたコペ帝国軍、兵力五万の内、死者八千人。
ギルザは森の入り口で仁王立ち。一番にエルフの女を連れて来る者を待ち構えていた。
コペ帝国軍の最前線はエルフの里を覆う深い森を、三分の一ほど侵略していた。力づくでの行軍、少数部隊が半ばゲリラ戦ごとく、各自攻め込む戦略は、この不思議な森を攻略するに適していた。
「さあ、どうした。最初にエルフの女を捕まえてくるのは誰だ!」と叱咤激励する。
エルフの矢が影から放たれ、五人ほどのコペ小部隊を絶命させる。
「いたぞ。」
「あの木の上だ。」
「おおっ。」
エルフは木蔭から弓矢で攻撃するが、コペ軍も矢で応戦。弓矢ではエルフの方が技術が優れている。
しかし、数の勢いでコペ軍は攻める。近くから攻撃され、肩を射抜かれたエルフが数名。エルフもこの数を相手にするのは難しい。有利でないとわかると森の奥へ撤退する。
少しづつ、コペ軍が森に隠されたエルフの建物を見つけ、攻める。樹冠に作られた太い根とツタの建物には火がつけられる。ほとんどが、撤退後、もぬけの殻だ。
そして、コペの小部隊が何隊か、とうとう森の深部にある、エルフの集落を見つけるに至ったのだった。
ここまで来た者達はコペ軍の中でも強者揃い。下手に声をあげず、静かにエルフの隙を狙う。
「やはり、戦闘は男に任せて女は回復術等にまわしているな。」ギルザ派の精鋭ザメンは、細身で長身のエルフ部隊の出入りを観察する。
「ああ、女を捕らえるには集落に攻め込むしかないな。」ザオもギルザ派だ。股間を大きな手で掻きながら頷く。
「お前、その興奮した時の癖。いい加減やめろ。」ザメンは注意する。
「仕方ないだろ。エルフ女ははじめてだ。興奮もするさ。」とザオはエモノのバトルアックスと自分のモノを交互にいじり始めた。
遠くからは「エルフだ」「こっちにいるぞ」と忙しなく声が上がる。矢を放つ音や人が呻く声が聞こえる。
「こっちだ。」ザオはデカイ鼻をヒクヒクさせると見つけた集落の奥、右手の建物ものを目指す。
怪我を負ったエルフが数名入るのを確認して、「ここのようだ。」とザメンも頷く。
樹冠にある建物の正面から、大きな葉の扉を勢いよく開き、二メートル近いザメンが、巨体で攻め込む。負傷しながらも、エルフ戦士たちは素早く構えて応戦態勢。
戦士たちの後ろに隠れるように、二人の銀髪のエルフが壁近くまでザメンから後退した。顔が似ているし、二人とも銀髪だ。
「姉妹か。」とザメンは、ふと思った。
回復と治療役だろう。皮や棘の鎧をまとった戦士たちとは対象的に、二人のエルフ姉妹は緑のツタで大事なところを葉で覆っただけ。
「ドガッ。」とバトルアックスで、木と木の間をネジ開け、ザオは建物の後ろから、侵入する。そして、銀髪エルフを片腕に一人づつ掴み、裸のくびれた腰に腕をまわす。
いきなり掴まれた拍子に、胸を隠すツタが一本切れて、以外にも細いエルフの女体についている巨乳がこぼれ、溢れた。ショックで、我に帰った銀髪エルフが「キャーッ」と叫ぶ。
ザオは御構い無しに、後ろから、逃げ出す。あの声では足止めは無用とザメンも素早く撤退した。
合流すると、ザオは姉をザメンに渡し、巨乳の妹を大事そうに抱き直し、また、すぐ別れた。ザオはデカイ鼻をヒクヒクさせ、銀髪エルフの匂いを嗅ぐ。
ザオは北東へ、ザメンは北西、それぞれ銀髪エルフ女を抱え、ギルザの待つ、森の出口へ急いだ。
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