無関心な箱の中での小さな優しさ
毎朝電車で二十分揺られていく。
朝の通勤ラッシュはそれだけで体力を奪われてしまう。
それでも学校に行くためには電車に乗るしか方法はない。
共に揺られている制服姿の人達も、スーツを身に纏いつかれた顔をしているサラリーマンも、私服を着ている人々も、
皆こんな箱の中にぎゅうぎゅう詰めになることを誰も望んではいない。
だけど皆、行かなきゃいけない場所があって、ここに入らざるおえない。
それにしても電車は不思議だ。
同じ空間で、すごく近い距離にいながらも、お互いを認識し合わない。
例え毎朝決まった時刻に顔を合わせる人がいようとも、学校で教室を共にし合うように声をかけたりはしない。
だけど、皆無関心というわけではない。
例えばお年寄りが来た時は誰か一人は必ず席を譲る優しい人がいる。
この間一番驚いたことがあった。
学校から帰る電車に乗っていた時のことだった。
いつも見るサラリーマンと向かい合って座っていたのだが、その隣で眠ってしまった男の人がいた。
髪は金髪に染めていて、アクセサリーもたくさんついている、普通は近づきたくない人だ。
だけどそのサラリーマンは突然彼の肩をゆすった。
彼がその人にもたれかかっていたり、邪魔になっていたのならわかる。
だけど寝ている人は上手く一人で体勢を保っているだけだ。
何故起こしたのか不思議に思ってみていると・・・。
「次の駅で降りるんですよね。もう起きた方がいいですよ」
サラリーマンは当たり前のように彼に呟き、言われた本人は一瞬キョトンとしてから次の駅を確認した。
「ああ、すんません。ありがとうございます」
いかにもヤンキーみたいな風貌をした男は嬉しそうな、気恥ずかしそうな顔をしてお辞儀をしてお礼を言い、電車を降りて行った。
サラリーマンも恥ずかしそうに笑っていたが、その場にいた者達の心が温かくなった瞬間だった。
帰りの電車、疲れた心と体を抱えて揺られていく。
皆が無関心にお互いを意識し合わない。
だけど時には境界を越えて
他人に優しくしたくなる時もある。
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