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神立神様学園高等学校神頼み部の神ってる奴ら 作者:Y/UMA
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春は運命を動かせる

ここまでUMA
「うー、寒いな」
 達也は自分の体を抱きしめながら歩いていた。彼は震えている。
 季節は春、なのに今日は寒い。まぁ、午後10時という微妙な時間だから別にそこまでおかしくないが。
 なんの依頼もこなかった部活を終えて、達也は今帰宅途中だった。10時というのはちとばかし遅い気がするが、これまた何らおかしくない。
「うぅ、立ち読みが長すぎた」
 何故なら、今日は月曜日。某有名週刊マンガ雑誌の発売日だ。部活仲間と夕食を食べ終えてから読み始めたら、いつの間にかこんな時間になっていた。
「だー、帰って風呂入って、寝よ」
 達也はマンションで一人暮らしをしている。別におかしいことではない。神立神様学園高等学校だけではなくこの街の学校のほとんどの生徒がマンションで一人暮らしだ。マンションといっても、ぶっちゃけた話、寮みたいなものだが。
 何故そんなおかしなことになっているかというと、神様を必要としている世界のために次期神様候補を育てているという名目で存在する達也の通っている神様学園高等学校を初めとして、この街に存在する全ての学校は、世界にとって必要なものを生産することを目的としてつくられ、普通じゃない才能を持った人間が集められていた。そして、それぞれの分野に励むためという名目で街の外、つまり外の世界と隔離されている。
 もちろん大人も住んではいるのだが、大概の大人はこの街の学校の卒業生だ。
 中学生までは全寮制なのだが、高校生になってからは自立できると判断され、一人暮らしが原則となる。
 学生達の収入は生活費として、国から支給されている金と、部活で稼ぐ金の二通りだ。
 だから、ほとんどの学生はなんらかの部活に所属している。その部活も部活で、郵便配達部、商業部、掃除部などの仕事にしか思えない部活がほとんどだ。
 そんな世界に必要とされているものを生産するためのこの街は世間一般ではこう呼ばれている。
-『楽園エデン』と。
 まぁ、実際楽園とはかなりかけ離れているのだが。
 と、そういう訳で帰るべくマンションへ向かう達也だったが、ふと裏路地から人の声が聞こえてきて足を止めた。
「なによ!?」
「ゲッヘッヘ、俺達と遊ぼうぜ」
 ベタな展開すぎるだろ。
 達也はそうツッコミたくてウズウズしてきた。
 覗いてみると、恐らく染めているだろう金髪少女がモヒカン肩パッドマッチョ野郎達にからまれていた。
「世紀末!?」
「ああん?」
 しまった。ツッコンでしまった。と頭を抱える達也。
「何もんだてめぇは?この神ってる世紀末男の俺達の邪魔をするとは良い度胸じゃねぇか?」
 世紀末男が卑下な笑いを浮かべる。ほんと、世紀末だ。
「ドラ○もんだ!!」
 ヤケクソになって叫ぶ達也。
「……」
 世紀末男達は困ったように黙ってしまう。
 金髪少女も呆れた目で達也を見ていた。
 達也は自分にはボケが向いてないことを学んだ。
「だって、何えもんだって聞いてきたから……」
 少しいじけてみる。
「馬鹿にしてんのかあぁぁぁっ!!」
 世紀末男がキレた。
「お前馬鹿じゃなかったのかあぁぁぁっ!?」
「そういう意味じゃねぇっ!!もういい、テメェ、ぶっ潰してやる」
 青筋を浮かべて突撃しようとしてくる世紀末男を見て、反射的に金髪少女の手を掴んで逃げだす。
「ちょっと、何で逃げるのよ!?こういう時はパパッと倒すのがテンプレでしょう!?」
「残念、俺はそんなヒーローみたいに強くはないんだよ!!」
「カッコ悪っ」
「うっさい、あの場を助けただけでも感謝してくれ!!」
 もともと助ける気はなかったんだからとは口が裂けても言えない。
「まぁぁぁて、こらああああ!!ヒーッハァッー!!」
 世紀末男のうちの太っている男が信じられないくらいの速さで追いかけてくる。
「何で!?何であいつあんなに速いのよ!?」
「俺は神ってる体系に似合わない速さの人間だからな!!」
「嘘だろおぉぉ!?」
 二人は必死で逃げ続ける。



「だああーっ!!疲れたああー」
「何よ、男のくせにだらしない」
 世紀末男達を振り切ってから疲れて草むらにへばってる達也に金髪少女が言った。
「だいたい誰のせいでこんなことになったと……」
 そこで言葉が止まった。
 初めてゆっくり金髪少女の顔を見たからだ。
 可愛い。染めているだろう金髪が似合ってないのが残念だがそれをふまえても可愛いの部類に余裕で入るレベルだ。ただ、金髪じゃなくて茶髪だったらもっと可愛かったはずだ。勿体無い。
「私のせいよね……」
 金髪少女は俯いてしまった。
「いや、えっとあのさ……」
 あんまり強いことが言えなくなった達也は東吾から教えて貰った対女性スキルを使おうとする。
「何?」
「……いや、何でもない」
 ああ、俺はヘタレだ。と、達也はため息をつく。
「そう」
 怪訝な目で達也を見てから、金髪少女は胸ポケットからタバコとライターを取り出し、タバコを口にくわえた。
「っ!?没収!!」
 達也はライターとタバコを奪いとる。
「なにすんのよぅ!?」
 ライターとくわえていたタバコを奪い取られて達也を睨みつける金髪少女。
「未成年の煙草は禁止だ!!」
「何?あんた非行少女を救ってから煙草を取り上げるって、熱血教師きどりですかぁ?」
「うむ、可愛い女の子の健康な体を守るのが熱血教師の役目ですからね」
「別に女の子限定じゃないでしょ?……って、今可愛いって言った?」
 少女が目をパチクリさせる。
「いや、川が良いって言った」
 達也のヘタレ度はそうとうなものだった。
「……そう」
 少し寂しそうな顔をする。
「可愛いっ!!」
「っ!?」
 金髪少女の顔が真っ赤に染まっていく。
「まぁ、そういうわけで君の健康な体を守る義務があるわけなのだよ!!」
「じゃあ、煙草はとりあえずはやめとく」
「うむ。そうしてくれたまえ」
「あんたのキャラがつかめないわ」
 少女はクスッと笑う。
「そういやさ、君髪染めてるよね?」
「え、うん。だから?」
「もともと茶髪?」
「何で分かったの?まさか、ストーカー!?」
「ちげぇよ!!会ったばっかだろうが!?」
 達也が否定する。
「チェッ、慰謝料とれると思ったのに」
「この悪女が!!それでさ、個人的感想でいうと元の色にした方が断然可愛いと思うよ?」
 その言葉に金髪少女は顔を赤らめて、俯いた。
「……そう思う?」
「そう思う」
 達也はヘタレなりに頑張る。
「そっか……ん~、元気でた。それじゃあね」
 金髪少女は立ち上がった。
「ん、じゃあな」
 帰り際に金髪少女は思い出したように振り向いた。
「あっ、ちなみに私は神立神様学園高等学校2年B組、泉堂小春せんどうこはるだから。その……今日は助けてくれてありが……とう。なんて、別にあんたの為に言ったわけじゃないんだからね!!」
「あざとっ!?」
 走り去る少女の後ろ姿を見ながら達也は苦笑した。
「そういや、俺の名前は名乗り忘れたな」


 その後、達也は帰宅途中にタバコとライターを弄びながら帰っていたところを青い服を着た男達に連れ去られました。
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