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ツレヅレなるままに ~冬~ 作者:Wonder Forest
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前編

「ねぇ、あの人、モデルさんかな?」

「外人さんって皆あんなに綺麗なの?」

「やべぇ、俺声掛けてこようかな」

店にいた客たちが口々に言う。

西洋な顔立ちに似合わない、いや、一種の幻想的な空気さえ漂わせる真っ黒な髪に、ビー玉より透けた青い目の女性が5分ほど前から、店でただじっとどこかを見ている。

そんな噂の渦中の人に、バイト上りの僕は声を掛ける。

「ごめん、待った?」

殴られた、痛くはないけど。

「おせぇよ、どんだけ待たせんだよ」

「だから、終わったら連絡するって言ったのにー。」

「うっせぇ!たまたま通りかかったんだよ!!」

周りの人たちが、その綺麗な声から出てくるとは思えない言葉に、びっくりした顔でいる。

「ほら、周りの人たちが驚いてるよ?」

「あぁ゛?」

威嚇的に周りを見る、さっと目線を逸らす人たち。

「まぁいいんだよ」

千冬は、向き直る。

「んで、もういいのか?」

「うん、大丈夫ークロワッサン今日は焦げちゃったから、メロンパンで許してねー」

「は?ふざけんなよ、一二三てめぇ、しっかりしろや」

「ごめんねー」

「もういいわ。とりあえず帰るぞ」

手を強く引っ張られながら店を出てゆく。客は目を丸くしたまま。



手を強く引かれたまま、家についてそうそう言われる、

「ほら、さっさと風呂入れよ。きたねぇんだよ。」

「うんー。一緒に背中流しっこしよー」

「ふざけんな、入りたきゃ一人で入れ。せめぇんだよ」

「そうだけどー、二人の方が楽しいのになー。」

そう、言いながら脱衣所に入っていく。

頭を洗っていると、音がして千冬が入ってくる。

「てめぇ、ちゃんとシャンプーハット着けろって言ってんだろ!」

頭を洗ってる状態でシャンプーハットをはめてくる。

「いや、ちょっとまってーそれじゃシャンプーが入・・・ぎゃああああ」

目がぁあああ!!目がぁああああ!!

「あっ、ちょ、お前しっかりしろ!!」

慌ててシャワーを目に当てる、蛇口全開で。

「きゃぴぃいいいいい!!」





「ちょっと狭いだろ、一二三、出ろよ」

「向かい合わないで、こっちおいでよー」

おいでおいでする。また殴られる。

「尚更、狭くなんだろ」

とか言いながら、角度を反転させる千冬。

思わず抱きしめて頬擦りしちゃう。

「きゃっ」

あ、可愛い声出た。

「てめぇ・・・」

真っ赤にした千冬、「可愛いです。」あ、声出た。

千冬がもっと真っ赤になった。

「・・・・うっせぇ。」

小さく、千冬は言葉を返した。



「ったく、なんでこの家は、布団が一枚しかねぇんだよ。」

千冬が愚痴をこぼす。

「いいんだよー、僕、ソファーで寝るからー」

「ふざけんな、家主が布団で寝ないでどうすんだよ。」

「えー?千冬ちゃんをソファーで寝かせられないよー」

「それこそふざけんな、私も布団で寝るんだよ」

「あー、なるほどねー。枕の代わりのクッションどれでも使っていいよー」

千冬は迷わず僕の腕を取って、

「お前の腕枕で、いいんだよ」



「明日千冬ちゃんお休みなのに、僕休みじゃなくてごめんねー」

「は?私がお前のところ行って、パン食ってれば、デートだろ。」

「わー来てくれるんだー。明日は頑張って焼くねー」

「全くだ。明日はちゃんと作れよ!!」

「うんー・・・千冬ちゃん大好きー」

あまりの愛しさに、抱きしめる。

「・・・!!私は大嫌いだよ!!」

千冬は顔を上げて、唇を重ねる。

「嘘だけど」

最後の言葉は、消え入りそうな声で。

「んふふー」

「きめぇんだよ!!寝るぞ!!明日も早いんだろ!」


きっと、千冬がまた顔を真っ赤にしてるかと思ったら、含み笑いが中々抜けなかった。
どうも、始めましてだったり、こんにちはの人もいるかな?
わんだーふぉれすとです。
お楽しみ頂ければ幸いです。
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