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前編
「ねぇ、あの人、モデルさんかな?」
「外人さんって皆あんなに綺麗なの?」
「やべぇ、俺声掛けてこようかな」
店にいた客たちが口々に言う。
西洋な顔立ちに似合わない、いや、一種の幻想的な空気さえ漂わせる真っ黒な髪に、ビー玉より透けた青い目の女性が5分ほど前から、店でただじっとどこかを見ている。
そんな噂の渦中の人に、バイト上りの僕は声を掛ける。
「ごめん、待った?」
殴られた、痛くはないけど。
「おせぇよ、どんだけ待たせんだよ」
「だから、終わったら連絡するって言ったのにー。」
「うっせぇ!たまたま通りかかったんだよ!!」
周りの人たちが、その綺麗な声から出てくるとは思えない言葉に、びっくりした顔でいる。
「ほら、周りの人たちが驚いてるよ?」
「あぁ゛?」
威嚇的に周りを見る、さっと目線を逸らす人たち。
「まぁいいんだよ」
千冬は、向き直る。
「んで、もういいのか?」
「うん、大丈夫ークロワッサン今日は焦げちゃったから、メロンパンで許してねー」
「は?ふざけんなよ、一二三てめぇ、しっかりしろや」
「ごめんねー」
「もういいわ。とりあえず帰るぞ」
手を強く引っ張られながら店を出てゆく。客は目を丸くしたまま。
◇
手を強く引かれたまま、家についてそうそう言われる、
「ほら、さっさと風呂入れよ。きたねぇんだよ。」
「うんー。一緒に背中流しっこしよー」
「ふざけんな、入りたきゃ一人で入れ。せめぇんだよ」
「そうだけどー、二人の方が楽しいのになー。」
そう、言いながら脱衣所に入っていく。
頭を洗っていると、音がして千冬が入ってくる。
「てめぇ、ちゃんとシャンプーハット着けろって言ってんだろ!」
頭を洗ってる状態でシャンプーハットをはめてくる。
「いや、ちょっとまってーそれじゃシャンプーが入・・・ぎゃああああ」
目がぁあああ!!目がぁああああ!!
「あっ、ちょ、お前しっかりしろ!!」
慌ててシャワーを目に当てる、蛇口全開で。
「きゃぴぃいいいいい!!」
「ちょっと狭いだろ、一二三、出ろよ」
「向かい合わないで、こっちおいでよー」
おいでおいでする。また殴られる。
「尚更、狭くなんだろ」
とか言いながら、角度を反転させる千冬。
思わず抱きしめて頬擦りしちゃう。
「きゃっ」
あ、可愛い声出た。
「てめぇ・・・」
真っ赤にした千冬、「可愛いです。」あ、声出た。
千冬がもっと真っ赤になった。
「・・・・うっせぇ。」
小さく、千冬は言葉を返した。
◇
「ったく、なんでこの家は、布団が一枚しかねぇんだよ。」
千冬が愚痴をこぼす。
「いいんだよー、僕、ソファーで寝るからー」
「ふざけんな、家主が布団で寝ないでどうすんだよ。」
「えー?千冬ちゃんをソファーで寝かせられないよー」
「それこそふざけんな、私も布団で寝るんだよ」
「あー、なるほどねー。枕の代わりのクッションどれでも使っていいよー」
千冬は迷わず僕の腕を取って、
「お前の腕枕で、いいんだよ」
◇
「明日千冬ちゃんお休みなのに、僕休みじゃなくてごめんねー」
「は?私がお前のところ行って、パン食ってれば、デートだろ。」
「わー来てくれるんだー。明日は頑張って焼くねー」
「全くだ。明日はちゃんと作れよ!!」
「うんー・・・千冬ちゃん大好きー」
あまりの愛しさに、抱きしめる。
「・・・!!私は大嫌いだよ!!」
千冬は顔を上げて、唇を重ねる。
「嘘だけど」
最後の言葉は、消え入りそうな声で。
「んふふー」
「きめぇんだよ!!寝るぞ!!明日も早いんだろ!」
きっと、千冬がまた顔を真っ赤にしてるかと思ったら、含み笑いが中々抜けなかった。
どうも、始めましてだったり、こんにちはの人もいるかな?
わんだーふぉれすとです。
お楽しみ頂ければ幸いです。
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