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me m [ミーム] 作者:q69p

day1 ターニング・ポイント

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7

真っ黒な道を歩きながら、僕は自分を彼女に吐き出す。
「姓名はアレクサンダー祐。性別、男。十四歳。血液型はAB。身長百六十二センチ。体重四十八キロ。金髪は地毛。繰り返す、金髪は地毛」
「ぷっ。そんなに気にしてるなら染めればいいのに。
ってか、ハーフだったんだ。成る程。
名前しか聞いてなかったから、ちょっと不良ぶって金髪に染めてんのかと思ってた」
「更に繰り返す、金髪は地毛」
「ぷふ。はいはい。
もう、そんな顔しなくても」
「顔?」
「捨てられた子犬みたいな顔してる」
僕はそんな顔をしていたのか。
自分では気づくことが出来なかった。
「さっきの自己紹介に加える。
どうやら僕は髪の事を人に指摘されると、精神的に傷つくらしい」
「らしいって、おいおい。
自分の事がよくわかっていない、も追加しなきゃならないみたいね」
本当に、わからない。
例えば今、僕の目の前を何かが横切ったが、その何かに惹かれて僕は何処かに行ってしまうかもしれないし、暗くて何も見えないのなら、目なんて要らないなどと言い出して、自分の目を自ら潰してしまうかもしれない。
そういう奴だと、僕は僕の事を認識している。
あくまで、例え話だが。
「ねえ、もっと教えてよ。
なんでもいいから」
教えてと言われても、教えたい事が思いつかない。
…ふと、今日の学校での会話を思い出した。
「僕は……学校に通っている。
中学校だ。
その、学校で、その、友達が出来た。
最初は、確か、そう友則だ。
秋葉友則。
僕の始めての友達だ。
僕が男子トイレに入ろうとした時に、馬鹿みたいに慌てた様子で彼が僕の肩を後ろから叩いてきたんだ。
女子トイレはあっちだぞとかなんとか言いながら」
「ふうん…。
ねぇ、ちょっと其処で止まってくれる?」
「?…どうしたの」
足を動かすのをやめる。
すると、彼女がスルスルと僕の後ろ側に回って、肩を叩いてきた。
「これで私も友達?」
後ろに振り返ると、ちょっと頬に朱がさした彼女が笑っていた。
「…はい」
…正直、少し嬉しかった。
「ありがと。
ねぇ、もっかい前向いて止まって」
「また?別にいいけど」
ピタリと止まる。
「うん、やっぱかわゆい」
脳味噌までピタリと止まる。
「は?い?」
「こりゃあ、秋葉さん、だっけ?その人も間違えるわけだわ。
私より可愛いもん」
………。
この夢が終わったら、髪を切りに行こう。
そうだ、散髪行こう。

「ねえぇえ?ねえ、ってば」
「うるさい」
「むう、酷い、友達に対してその態度は、人間としてどうかしている」
「友達だということを盾に、友達の人間性を侮辱するのは、友達としてどうかしてる」
何が楽しいのか、ぷくくくと、彼女は口から擬音を漏らす。
「はいはい。ごめんなさいってば。
でも、どうしてそんなに髪を伸ばしてるのか、教えてくれない?」
少し躊躇ったけど、下手な嘘をついてもこの人には通じないだろうと思い直すことにした。
「憧れ、というか、理想、というか、そういう人がいるんだ。
その人は女の人で、僕と同じ金髪で……あ、別に女になりたいとか、そういうのじゃなくて。
兎に角、その人の髪型を似せてみたんだ」
「ふうん、なんか、あなたにしてはありがちな理由ね」
「いいじゃないか、僕だって誰かになりたくなったりもするし、自分が嫌になることだって沢山ある」
「うん、そのセリフはあなたじゃないと言えないわね。
いい調子」
馬鹿にされるかと思ったけど、返答は意外とあっさりしていた。
「でも、なるべく言わないこと。」
「…うん」
散髪に行こうだなんて考えた事を、少し後悔する。
「格好でいえば、君も相当なものだと思うけど」
「その質問に対しては、もう少し歩いてから、ね」
そういって、彼女はスタスタと歩いて行ってしまった。
あんなに小柄なのに、随分と速い。
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