魔法タヌキVSキツネ女
とある山中。一匹のタヌキが楽しそうに散歩していた。
「フン、フンフン~♪ いやぁー久々に故郷に帰ると気分がリフレッシュするのですぅー」
タヌキは人語を話し、大きくジャンプした。
「瑞穂様は優しいのです。都会に疲れたら山でリフレッシュして帰ってきていいよーって。それに引き替えしょーすけ様は冷たいのです。もう帰って来るなぁーって……でも、リサは御恩を忘れません! そんなしょーすけ様も大好きなのです♪」
このタヌキ、実は魔法の力が宿ったリサという不思議なタヌキなのだ。リサは気分良く、引き続き故郷の山を散歩する。
またとある山中。一匹のキツネが楽しそうに散歩をしていた。
(うわぁ~キツネになると全然世界が違う~~! ボーナスとしてこっそりもらった動物変身薬、最高! 変身して山に入るの初めてだよぉー)
キツネはコンコン鳴きながら茂みの奥へと進んでいく。
(ドキドキ。鉄砲を持った猟師には気を付けなきゃ。本物のキツネと見間違えられたら大変だもんね。でも野生動物に会っても困るなぁ)
このキツネ、実は動物変身薬で変身したももという知らぬ人なぞいない国民的美少女アイドルなのだ。ももは好奇心いっぱいで山を駆ける。
山の頂上付近は草原のようになっていて、ちょうどてっぺんの位置に大きな木が一本生えている。ポカポカ陽気な日差しの中、リサはその木の根っこで丸まってうたた寝をしていた。しかし、何やら怪しげな気配に気付いた。
リサが目を覚まして辺りを見回すと、何と目の前にキツネの姿があった。
「キツネ!? でもおかしい。キツネじゃないような気配がするのです……」
リサは妙な気配のするキツネに出会って戸惑い始めた。
リサを見つめているキツネは……変身中のももだった。
(すごい!! 野生のタヌキだ!! 初めて見た!!)
ももは初めて見る野生のタヌキに感動し、その場でじぃーっとリサを見つめていた。
「なんでしょう、あのキツネ……私のことをガン見してきます。ハッ! もしやあの表情、タヌキより人気が高いと余裕こいてやがるのではないでしょうか? ゆ、許せません!」
リサは毛を逆立てて怒りに震えた。
(わ、わわ! すごい、毛が立ったぁ! まんまるになって可愛い!)
ももはリサの心情に気付かず、両者勘違いしたまま対面し合う。
(あ、良い事思い付いたぞ。変身解いて元に戻ってみよう。どう反応するかなぁ。やっぱりビックリするかなぁ。へへへ)
イタズラ好きのももはキツネの姿から人間に戻って、タヌキのリサがどう反応するのか試してやろうと思った。
「む。あのキツネ……まさか……!!」
リサはキツネに変身しているももが何かしようとしているのに気付いた。
体中の体温が上昇し、キツネのももは体の変化に身を任せる。
「キュィー」
ももは前足と後ろ足でふんばる。すると、しっぽが体の方に向かって縮み始めた。
「変身!!? そうか、普通のキツネと違う気配と感じたのは化け狐だったのですね。化け狐は危険と聞きます……しかし、私も魔法の力を得ました。どう出てくるか……今は様子を見るしかないですね」
リサはももの変身を勘違いし、警戒した。
リサが見つめる先で、ももはキツネから人間の姿へと戻っていく。
三角に尖った耳が人間の楕円形に形を変えながら、頭のてっぺんから目の横へと移動していく。前足と後ろ足の鋭い爪が小さくなり、人間の女の子のキレイなツメに変わっていく。
「キュゥゥゥ―アーァー」
声帯がキツネの鳴き声から人間の叫び声に変わっていく。体の骨格が変わり、四足歩行に適したものから、二足歩行に適したものになる。体中の黄金色のふさふさした毛が少しずつ体の中に吸収されていく。代わりに、頭の方では茶色い毛が伸び始め、髪の毛となった。牙が小さくなり、歯になったところで、前に突き出ていたマズルが縮み始め、キツネ顔から人間の女の子に戻っていく。黒ずんだ三角の鼻先が肌色に変わり、そのまわりに生えていた白いヒゲが顔の中に吸収された。
「あれは……ニンゲンになろうとしているようですね。しかし、先にしっぽを隠すとはなかなか上級の化け狐。争いたくはないところです」
尚もリサは警戒してももの変身過程を見つめる。
一方、ももは慣れているとはいえ変身中にリサのリアクションを観察している暇はなく、変身は最終段階に入っていた。ムネのあたりが大きく二つ膨らみ、前足が手、後ろ足が足として二分化する。
「あぅぅ……はぁはぁはぁ……」
キツネからの変身を終えたももは少し、草の上で横になった。急激に戻ったので、体力の消費が著しい。
「やっぱり変身はじっくりがいいなぁ。急にするとしんどいよぉ~はぁはぁ……あれ? タヌキ逃げてないなぁ。あ、でもキョトンとしてる。可愛い、うふふ」
人間に戻ったももはゆっくりと立ち上がり、リサと向き合ってほほ笑んだ。
「ガーン。あ、あの姿は国民的美少女アイドル、ももちゃんじゃないですか!! 耳もしっぽも出ていない……う……うまく化けましたね……そうか、私もああいう姿に変身したらしょーすけ様をもっふもふできたのですね……うぅ……」
リサは本物が目の前にいるとは露とも知らず、独り言を呟く。
「それにあの余裕の微笑み……ま、負けていられません! 勝負です! 私だってももちゃんの姿になれるんだから!」
リサの闘争心に火が付き、リサも変身を始めた。体全体がムクムクと大きくなっていく。体中の毛が縮み始め、前足と後ろ足が人間の女の子のように変化していく。
「あ、あれ!!? もしかしてあのタヌキも誰かが変身していたの?」
リサが変身し始めたことに、すっかり野生のタヌキだと思っていたももは衝撃を受けた。
リサはタヌキの丸い耳を残したまま、前に突き出ているマズルを縮め、ももの顔に近付ける。茶色い髪の毛を生やし、ムネを膨らまし始める。
「え……えぇ!?」
再び驚いたのはももだった。見覚えのある顔になったとおもいきや、それは自分そっくり。自分に双子なんていたかなぁとさえ思ってしまった。
「もしかして……本当にタヌキは化けられるの? 私の真似をしようとしているの?」
少し怖い。でも面白い。ももは興味深々にリサの変身を見つめる。
体中の毛が体に吸収され、おおよそ人間の姿に変身したリサ。しかし、耳としっぽはタヌキのものが生えたままだった。
「もうちょい……引っ込め! あれ? 何で引っ込まないのですか? これじゃ私のほうが変身下手くそになっちゃうじゃないですか! えぃっ、やーっ! うぅ……うわーん。初めてのものに変身したから、うまくできないのですぅー」
リサは勝負に負けたと思い、その場で大声をあげて泣き始めた。
「あ、あれ? 泣いちゃった。どうしたのだろう? それにしても、体の一部分を変身させたままってすごい!! キープは難しいのに……かなりの上級者じゃないとあんなことできないよぉー」
もももまた勘違いしたままリサを尊敬の眼差しで見つめる。
ももは興味の惹かれるままにリサに近付いた。
「あ、あのー。どこの方か知りませんが、変身お上手ですね。どうやって体の一部を獣化させたままにしているんですか?」
話かけられたリサはビクッとして答えた。
「貴女の方が上手ですよぉー。私はまだまだ未熟です。これだからタヌキよりキツネの方が人気出るんだぁぁー」
「?」
リサはももにはわからない話をして再びびぇーと泣き始めた。両者がそれぞれの事情を話し、驚愕するのはもう少し先のことであった――
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