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ブラジャーになる呪いをかけられてしまったわたし。元の姿に戻るためには、女の人の変態的な妄想力が必要って、そんなの無理です(涙)
☆★☆ キャスア ☆★☆
ミヤの魔法をくらったわたしだったが、痛みはまるで感じていなかった。
だからすぐに体を起こそうとした。
しかしピクリとも動かない。
まるで神経が行き届いていないかのようだった。
いったいわたしの身に、何が起こったというのだろうか?
ひょっとしたらミヤが使用したのは、筋弛緩系の魔法だったのかもしれない。
そう思っていると、敬一が手鏡を差し出してきた。
わたしに姿を確認させようとしたのだろう。
だけど下手くそで、鏡にはまったくわたしの姿が映っていない。
さっきから見えるのは、ピンク色のブラジャーだけだ。
――あれ?
そう言えば、どうしてこんな場所にブラジャーがあるのだろうか?
先ほどまでは、こんな物などなかったはずなのだが。
しかもこれは、いったい誰のブラジャーなのだろう?
まあ、ここにいる中で、わたしを除いたら女子はミヤだけだから、おそらくミヤのブラジャーだとは思うのだけど。
――いや、まてよ。
わたしはあることに気がついた。
秀平君は変態だ。
それに敬一も、ちょっとおかしなところがある。
男子のどちらかがブラジャーを持っていたとしても、いや、むしろ身に着けていたとしても、不思議ではない。
敬一、このブラジャーは誰の物なのですか?
わたしはそう質問をしようとした。
だけど声が出てこない。
唇も動かない。
喋られないのは困るな……と思っていると、ミヤの勝ち誇ったような顔が視界に飛び込んできた。
「どうかなキャスア? あたしがクソ親父にかけられてたのと同じ呪いをかけられた気分は?」
え? ミヤにかかってたのと、同じ呪い?
それはたしか、パンツの姿になってしまうというものだったはず。
――って?!
もしかして?!
わたしはある可能性に気がついた。
ひょっとしてこの鏡に映っているブラジャーは、わたしの現在の姿なのではないだろうか?
「ようやく察したみたいだね」
ミヤが楽しそうに笑っている。
「そう! その通りだよキャスア君! キャスア=ニルア=リルア君! キミは天才であるあたしの魔法によって、ブラジャーの姿になってしまったのだよ」
どうやら嫌な予感は当たってしまったようだ。
まさか……まさかこのエリートたるわたしが、ブラジャーの姿にされてしまうとは。
あまりにも屈辱的。
泣きたい。
だけどブラジャーの姿になっているから、涙すら出てこない。
その時わたしはあることを思い出した。
ミヤはパンツの状態になっておきながら、自由に空を飛んでいた。
おそらくはこの姿であったとしても、魔法は使えるはずなのだ。
――だったら!
わたしはすぐに飛行魔法を唱えた。
フワリと体が浮き上がる。
やはり魔法は使える。
これならミヤに仕返しができる。
わたしは飛行魔法をコントロールし、ミヤに体当たりしていった。
しかしパフッとぶつかるだけ。
ミヤはまるで何事もなかったかのように、平然としている。
むしろわたしを哀れむような目で見つめてきている。
――くっ!
この姿ではダメだ。
攻撃魔法を使用すればいいのだろうが、おそらくは難しい。
呪文は頭の中でも組み立てられるから、異世界の存在を召喚はできるけど、呼び出した精霊や精獣、それよりも上位の高等生命体や精龍に対し、何をして欲しいのかということを伝えられない。
やはり人間の姿に戻れなければ、何もできない。
仕返しは勿論、文句を言うことすら……
――あっ!
わたしはあることに気がついた。
これがミヤにかかってるのと同じ呪いだということは、スケベパワーとやらに反応すれば、人間の姿に戻れるはずだ。
不本意だけれど、ここは秀平君の汚らわしい妄想力に頼るしかない。
秀平君、わたしを見て変な想像をして下さい!
わたしは彼のもとへ飛んでいき、ヒラヒラと舞い踊った。
しかしすぐ、胸の中は不安に支配された。
空飛ぶブラジャーを見ただけで、スケベなことを考えられる人なんて、果たしているのだろうか?
そんな疑問が浮かんだのだ。
ひょっとしたらわたしは無意味なことをしているのではないだろうか?
心が折れそうになる。
だけど何もしないでいるのはもっと辛い。
だからわたしは、とにかくヒラヒラ舞い続けた。
しばらくクネクネ動いていると、不思議な波動が放たれるのを感じた。
もの凄いエネルギーの塊のようなモノが、わたしを包み込んできたのだ。
未だかつて感じたことのない感覚に、わたしは戸惑っていた。
おそらく、これがスケベパワーなのだろう。
それにしても――
わたしは思わず鼻で笑ってしまった。
まさか舞い踊るブラジャーを見ただけで、こんなにも凄まじいスケベパワーを放つことができるだなんて、秀平君はわたしが思っていた以上に、とてつもない変態だったようだ。
妄想に浸っているためか、顔も変態的に歪んでいる。
本来ならば絶対に関わりたくないような人だ。
だけど悔しいことに、今は秀平君のその変態さが、わたしにとっては救いなのだ。
もの凄いスケベパワーが、わたしの全身を包み込んでいる。
わたしはこのまま人間の姿に戻れることを確信した。
しかし――――
――――
……いつまで経っても、元の姿に戻る気配がしない。
まだスケベパワーが弱いのか?
そう思ったわたしは、秀平君の妄想力をさらにかき立てるべく、激しく踊り続けた。
「ニャッハッハッハッハ☆」
ミヤが爆笑している。
――くそ!
わたしはイメージの中で歯を噛みしめた。
元の姿に戻ったら、絶対に許さないと心に復讐の炎を滾らせ、呪いが解けるのは今か今かと待つ。
しかし一向に変化が訪れない。
秀平君からは、もの凄いスケベパワーが放たれているはずなのに?
不思議に思っていると、ミヤが笑いを堪えながら言ってきた。
「キャスアはね、シュウちゃんの妄想力に頼ったって無駄なんだよ」
――何で? と思いつつ、ミヤを振り向く。
するとミヤは、わたしの疑問をまるで感じ取ったかのように説明をしてきた。
「あたしの場合、元の姿に戻るためには、男の人のスケベパワーが必要。だからシュウちゃんでOK。だけどキャスアにかけた呪いには、アレンジが加えてあるの。元の姿に戻るためには、男じゃなくて、女の人のスケベパワーが必要なのだ」
女の人のスケベパワー?
ぐおんぐおんぐおんぐおん。
機内にエンジンの駆動音を轟かせながら、暗闇に染まった広大な宇宙の中を、ブラジャーのカタチをした宇宙戦艦が進んでいく。
「総員! この宇宙戦艦ブラジャー号の姿を見て、興奮する怪獣を探し出せ!」
艦長が叫んだ。
「艦長、ここにいます!」
巨大なモニターに、秀平君のような怪獣が映し出される。
しかし艦長は机を叩いて「バカモン!」と報告してきた部下を叱った。
「我々が探している怪獣は、雌だ! 雄など、どうだっていい! 雌を探せ! 雌でなくてはならんのだ!」
「そんな怪獣など、いません!」
「いませんではない! 探さなければならないのだぁっ!」
涙を流す艦長。
すると他の船員達も、一緒になって泣き出した。
わたしはハッとした。
どうやらあまりのショックで、現実逃避していたらしい。
無意識に飛行魔法を解除していたわたしは、床に落下していた。
秀平君が歩み寄ってくる。
わたしを拾い上げた。
ヒクヒク鼻の穴が大きくなったり、小さくなったりしている。
何だか嫌な予感がする。
慌ててわたしは逃れようとした。
しかしパンツの状態では、抵抗などできない。
為す術なく、わたしは秀平君によって、クンカクンカと匂いを嗅がれてしまったのである。
……最低だ。
乙女の匂いを堂々と嗅ぐだなんて、秀平君は本当に最低だ。
だけどそれ以上に、ブラジャーの姿になってしまったわたしが最悪だ。
……もう、死にたい。
そう思った直後、わたしは新たなスケベパワーの波動を感じ取った。
これは先ほど秀平君から感じ取ったものとは種類が違う。
わたしは波動のやって来た方向を振り向いた。そこにいたのは――
――ミヤ王女?
彼女がやたらと顔を赤らめている。
直後、わたしの体から白い煙が噴き出し始め、やがて、ポンッ! という小気味のいい音が響いた。
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