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やる気なし英雄譚 作者:津田彷徨

第1部 第1章 カーリン編

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魔法戦

「許さんぞ、お前ら!」
 痛みと出血を緩和する魔法をかけ、風の魔法士は怒りに震えながら立ち上がる。すぐに炎の魔法士が側に駆けつけると、エインスたちと距離を取るため、発火魔法をその中間の位置に放った。

「エインス、エリーゼ様はどうした?」
「それが奴らの手に……」
「なるほど、ではまず奴らを突破して追いかけるしかないか。その火を扱うネズミはまかせるぞ!」
 言葉を発するや否や、リュートは隻腕となった風の魔法士に踊りかかる。


 リュートの言葉に、エインスは頷き、炎の魔法士に向かい合った。
「さて、では二回戦といきましょうか」
 言葉とともに、開いた距離を急速に縮めにかかる。あと二歩で剣が届く距離まで近づいた時に、再度魔法士の手に炎が宿る。

 それを見てとった瞬間、エインスは右手を剣の腹に添え、叫んだ。
「『フリーズオン』」
 そう叫んだ瞬間、剣の周りを冷気が覆う。

 炎の魔法士は動揺するも、もはや発火魔法を取り消すことができず、そのままエインスに向けて放った。エインスの蒼白い冷気の剣は、炎を真っ二つに切り裂くと、振り下ろした剣をそのまま跳ね上げる形で、魔法士の体を切り裂いた。




 一方、風の魔法士と対峙したリュートは、徹底した魔法戦を展開していた。
「『シュタイフェ・ブリーゼ』」
「『ゲイル』」
 双方の眼前に空気の歪が生まれ、それが前方に走るも、中間点で破裂音を生み出し、消失する。

「あなたも魔法士だったのですか?」
「剣で切られたからといって、勝手に剣士だとでも思ったか?」
「不意打ちで私を傷つけたからといって、あまり調子に乗らないでくださいね、『ヴィルベルヴィント』」
 魔法士が唱えると、先ほどの倍ほどになる空気の圧が変動し、魔法士の前に風の束が生まれる。

「甘い、『ホワールウインド』」
 魔法士の二倍程の風の束がリュートの前に生まれ、魔法士の風を束を飲み込むと、そのまま叩きつける。
 魔法士は風の圧力に吹き飛ばされると、後ろにそびえ立っていた、燃える巨木に叩きつけられた。

「遊びは終わりだ。エリーゼ様が待ってるんでな」
「確かにあなたの魔法力は、私より上のようですね。ただ、勝負は最後に立っていたものが、勝者となるのです!」
 魔法士が左手を掲げると、リュートの四方からタリムの私兵が襲いかかる。

「チッ、小癪な。『ゲイル』」
 リュートは後ろに飛び下がると、左手に空気の歪を生み出し、左側の私兵を吹き飛ばした。しかし吹き飛ばした私兵の後ろから、新たな兵士が現れ包囲網を形成するようにリュートを囲む。

「いくらあなたが強くても、この人数差ではどうでしょう」
 リュートが十名に膨れ上がった私兵の包囲網を憎々しげに見回すのを見て、魔法士は勝者の笑みを浮かべた。

 中央突破を仕掛けるかと決意したその時、リュートの右肩が急に叩かれた。

「では、そこに一人参加しましょうか」
 そこには、満身創痍で立ち向かおうとする、エインスの姿があった。

「エインス、お前は十分働いたさ。おとなしくそこで休んで見ていろ」
「いえいえ、最後まで諦めるなって先ほど言ったばかりじゃないですか」
 その返事に、リュートは満足げに笑みを浮かべ、エインスもつられて微笑む。

「さて、最後の会話は楽しみましたか? では、終わりにしましょうか」
 魔法士の言葉が発せられると、私兵たちは二人に一斉に飛びかかった。


 二人は十人の私兵を相手に、魔法を使い半数にまでは減らすも、火傷の影響もあり、次第に動きが鈍り始めていた。半減したはずの私兵たちは、さらに増援の兵士が加わり、逆にその数を十五人と増やしていた。
 なんとか全周囲を包囲されないように、二人で巧みに入れ代わりながら、兵士たちの剣を捌いていくも、人数の差はいかんともしがたく、少しずつの後退を余儀無くされていた。

「さて、いくらあなたたちが強くても、もう限界でしょう。そろそろ諦めなさい」
 その言葉が空間に響いた瞬間、包囲網を築いていた一人の兵士の側頭部に突然矢が突き刺さる。そして周囲の視線が彼に集まると、その兵士は、沈み込むように前のめりに倒れていった。

 側方からの予想せぬ矢の襲来に、兵士たちは矢の飛来した方向へ、視線を向けようとする。その時を待っていたとばかりに、彼らの頭上から炎の矢が降り注ぎ、何名かの者はその炎の矢に貫かれ、倒れていった。


「はぁ、山登るの大変で遅れちゃったよ。ごめんね。ということで、五人ほどそこに参加させてもらおうかな」

 その空間に似合わぬやる気なさげな声が響き渡り、私兵も、風の魔法士も、そしてエインスとリュートも声の発せられた方向に顔を向ける。

 そこにはここまでの山登りのために、肩で息している男と、その部下たちの姿があった。
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