聞き手・秋山惣一郎
2015年7月11日21時19分
「言葉から考える安保国会」では、安倍晋三首相の国会答弁から特徴ある一言を選び、透けて見える問題について考えてきた。今回は、時事問題をお笑いのネタにして活躍する芸人のプチ鹿島さんに「安倍首相の答弁が映す社会とは」をテーマに縦横に語ってもらった。
――安保法制を巡る国会審議をどう見ていますか。
「ジャイアント馬場さんやアントニオ猪木さんは、自分の批判も書かれたプロレス雑誌を絶対に読んでたと思うんですよ」
――いきなりプロレスですか?鹿島さんがプロレスにも詳しいのは、よく存じ上げておりますが、今回は政治の話で……。
「話を最後まで聞いてください。読んではいたけれども、読んでるそぶりは絶対に見せなかった。何を書かれようが全く興味なんかない、という態度をとり続けていたんですね。むしろどんどん書いてくれ、と」
――はい。で?
「以前、安倍首相が『ある夕刊紙は、私のことを毎日のように人間のくずと報道している』と発言したのを覚えていますか」
――去年の2月、衆院予算委員会での発言でした。
「僕が思ったのは、あ、読んでるんだ、読んでると公言しちゃうんだ、ということです。考えてみてください。馬場さん、猪木さんのたとえが悪ければ、田中角栄さんでも竹下登さんでも、中曽根康弘さんでも誰でもいいです。一国の首相が、夕刊紙の批判記事もチェックしてますよ、なんて言いましたか。国会でもの申すことがありましたか」
――あぁ、そこにつながってくるわけですね。
「読んでいても読んでいないふりをする。書かれてなんぼ、どんどん書いてくれ、というのがリーダーの度量でしょう。安倍さんにはプロレス心が足りないと思います」
――プロレス心とは?
「プロレスは、まず相手の技を受けるというのが基本です。ロープに飛ばされたら、ちゃんと返ってこなきゃいけない。自分の強さを見せるのはそこからです。そういう競技です。ところが、安倍さんは相手の技を受けない。王者のプロレスをしない。相手が野党でも夕刊紙でも、最初から攻撃的になる。プロレスと議論は本当に似ているんです。まず相手の技や話を受けとめないと。そうじゃないと観客(国民)もポカンとしてしまう。安保法制について多くの世論調査で『説明不足』とされるのも、そんなところに一因があるような気がします」
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