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 政治の大きな役割の一つは、国民を幸せにすることと言っていいだろう。だから、歴代の首相は「幸せ」という言葉をよく使う。安倍晋三首相もそうだ。安全保障法制を整備する目的に「幸せ」を掲げる。「首相と幸せ」について考えた。

 政治の基本である「幸せ」。その言葉をどう使うかは、首相の個性や国家観、時代を表している。

 「今回の法制は、危機が起こった時に国民の命と幸せな暮らしを守るために、切れ目のない対応をできるようにするためだ」

 6月1日の衆院特別委で安倍首相は訴えた。施政方針演説でも「国民の命と幸せな暮らしは、断固として守り抜く」(2月12日)と強調した。

 首相のいう「幸せ」は、今あるものを守ることに主眼を置く。一方、歴代首相は安倍首相とは違って、主に目指す国家、将来像を語るため「幸せ」を使ってきた。生活や暮らしを幸せにする、という文脈で語ることが多い。

 つまり、安倍首相はすでに国民が幸せだと言っているようにも読み取れる。この法案が成立しなければ、国民は幸せでなくなると言いたいのかもしれない。