世界の株式市場で値動きの激しい展開が続いている。ギリシャ問題に続いて、先週は中国発の株安が東京市場に連鎖した。

 株価は上下するものだが、中国株の値動きは尋常ではない。今年に入って6割上がり、この1カ月足らずで3割下落、その後また大幅に値を戻して乱高下した。その要因は市場に介入したがる中国政府にある。

 上海の時価総額は東京を超えている。そんな中国の株価がここまで乱高下しては、世界経済の不安定要因になる。中国政府は政策の基本姿勢を見直し、習近平(シーチンピン)政権が掲げる「市場の役割の重視」の実を上げてほしい。

 このところの株価下落のきっかけを与えたのは、監督当局による規制だった。下落が大幅になると、当局は証券業界に2兆4千億円の資金を投じさせ、大株主には株を半年間売らないよう命じ、株価を支えるための介入を立て続けに行った。

 急落に先立つ株高に火をつけたのは昨年11月の利下げである。企業の債務負担を軽くする目的だったが、不動産が不振な中で、資金が株式市場に流れ込んだ。消費を促す策になるとの読みもあったのだろう。国営メディアも株式投資をあおった。

 株高は、国有企業の資金集めに利用された面がある。先月10日には原発事業を担う中国核能電力が上場し、2600億円を調達した。証券業界は、続々と行われた新規上場業務で利益をあげ、一部の証券会社は自身の株式上場を成功させた。

 しかし、中国経済は、かつての2桁成長から徐々に減速している。リーマン・ショック後の景気対策から続いた過剰投資の結果、企業は過剰設備と負債を抱えて業績も振るわなくなっていた。結果的に実体経済から遊離した熱狂を生んだ。

 中国の金融は政府と国有部門を軸とする構造が根強く残る。国有銀行を中核とし、国有企業への融資が優先され、民間中小企業が資金難にあえいでいる。

 株式でも上場は国有企業が主体で、証券会社は国有投資会社の傘下にあり、監督当局の指図に従う。外国との資金のやりとりは厳しく制限されている。

 この構造は、市場を安定させるようにみえて、実は逆だった――。それがこの乱高下で明らかになったことだ。

 下落局面では、政府の緊急対策が効かない場面もあった。一般投資家が政府を信用しなくなったからだ。経済ニュースメディアからは株価維持策への批判が起きた。こうした声こそが、健全な市場をつくるための大事な一歩と言える。