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![澤嶋秀昌(さわしま・ひであき)](/contents/226/487/970.mime4) |
澤嶋秀昌
(さわしま・ひであき) |
滋賀県出身。1992年、大阪音楽大学卒業。在学中より大阪シンフォニカー交響楽団団員として活躍。1992年、ドイツ国立アーヘン音楽大学に入学。1994年、同大学を最優秀で卒業後、同大学ソリストコースに進む。1996年、同コース修了。ホルンを近藤望、デイビッド・ブライアントの両氏に師事。現在、京都市交響楽団ホルン奏者、滋賀県立石山高等学校音楽科非常勤講師。京都橘大学吹奏楽部音楽監督。京響ブラスアンサンブル、ジャパンブラスコレクション各メンバー。
使用楽器:
アレキサンダー103MBL、107XMBL
使用マウスピース:
ティルツ・シュミット8
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国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。 |
─ホルンを始めたのはいつ頃からですか? |
ありきたりですが、中学校の吹奏楽部で、最初はトランペットをやりたかったのですが、「外れ」でホルンになりました(笑)。その中学が比較的活発な部だったこともあり、ホルンの先輩がとても上手で、「ああいうふうに吹けるようになりたいな」と思って熱心に練習するようになりました。高校も吹奏楽が盛んなところを選んだのですが、そこで恩師であるクラリネットの山川すみ男先生に出会い、音楽のイロハを学びました。その影響は今でもありますし、吹奏楽もずっと好きで、今は京都の橘大学の吹奏楽部を指揮・指導しています。 |
─音大を目指したのは?
高校3年生になる前に当時大阪フィルの近藤(望)先生を紹介していただき、レッスンを受けて大阪音大に入りました。近藤先生は非常に厳しくて、怒られてばかりでした。技術はもちろんですが、それよりも精神力を学んだような気がします。例えばコンチェルト見てもらうときも、「一番上の音は死んでも外すな」とか。レッスンが始まったとたんにハイFを出せとか、バテていたりすると「なんでバテてんねん!」と怒られたり。ちょっと調子が悪いと言うと「学生に調子が良いも悪いもない!」と言われたりとか。
でも、自分がだんだん歳を重ねて行くに従って、「こういうことが言いたかったんやろな」とわかって来たことも多かったですね。 |
─大学を卒業してから、ドイツのアーヘンに留学されたのですね。 |
そこでの師匠であるデイビッド・ブライアント先生には、最も大きな影響を受けました。ブライアント先生はアメリカのカーチス音楽院でメイソン・ジョーンズに教えを受け、リッカルド・ムーティに引っ張られてフィレンツェの歌劇場を経てケルンに移ったという経歴を持っています。
もちろんヨーロッパの音楽を好んでいましたが、教え方はアメリカ的で、基礎からきっちりとシステマチックに教えてくれました。彼のホルンを初めて聴いたときに「こんなふうにホルンを吹ける人がいるのか」と目から鱗が落ちるくらいびっくりしましたが、リップスラーにしても、自分の思っていたものと全然違うんです。「ホルンという楽器はこんなになめらかに音が変われるんや」ということを知りました。
最初に「全部教えるにはまるまる4年間かかるよ」と言われて、留学中は基礎練習とエチュードだけでした。音楽的なことはエチュードで学ぶという具合です。ブライアント先生もまた妥協しない人でね(笑)。エチュードで最後から2つ前の音を外したとしても、曲の頭からもう一度吹かされました。だんだん「音を外さないのが当たり前」というふうに洗脳されて、そうなると不思議と音って外れなくなるんです。「ホルンは音が外れやすい」と思っているから、みんな外すんやと思うんです。 |
─今は生徒にも教える立場ですが、やはりデイビッドさんに学んだことを生かして? |
そうですね。デイビッド先生に習ったことは、「自分で勝手に線を引くな」ということです。例えばppも「ここまで落としたらいいやろ」ではなく、もう一段落とせるようにしてみる。そうすると、元のppはより楽に吹けるようになるわけです。
それから、リップトリルもできた方がいい。これも、できないというのは練習していないだけです。ゆっくりから練習すれば必ずできる。まず、下の音から上の音に行って戻ってくる、この一往復ができれば、あとはそれを速くしていくだけですから。1月がんばれば必ずできると思っています。それができないなら、逆に奏法に問題がある可能性があります。 |
─リップトリルというのは、要はリップスラーですよね。 |
そうです。スラーで重要なのは、いかになめらかに次の音に変わるか、ですよね。だからリップトリルも速くできることに意味はないと思います。いかに段差なく音が変われるか、です。 |
─では、そういうなめらかなスラーを実現する方法は? |
まず、「どうしたらなめらかに吹けるんだろう」と考えることが大切です。上手な人の演奏を聴いて「ああ上手やな」ではそこで終わってしまう。「自分はこう吹きたい」と思いがまずあって、それを実現するために基礎練習をするということです。
それには、楽器を吹きに行ったらだめだと思うんです。あくまで自分が音楽をしようとしているものを拡声してくれる機械というか、自分の声が美しくなる道具というか、楽器をそういうふうに捉えるべきですね。
それから、やはり柔らかい口を持っている必要があります。そのためにロングトーンをして、リップスラーをして、というところに全て集約されると思うんです。1つの音をまっすぐ伸ばせない人が、2つの音のリップスラーをきれいにできるわけがない。そういう意味でもロングトーンは大切なんです。 |
─何か特別なロングトーンのやり方があるんですか。 |
これも僕の先生からの受け売りなんですが、メトロノーム60のテンポで32拍というロングトーンを生徒にはさせています。
1つの音を32拍吹くと、それで32秒かかります。これをpでまっすぐ伸ばす。32秒伸ばして28秒休めば1分になります。音域は、真ん中のCから広げて行く。Cから半音上を吹いて、次は半音下、さらに半音上、半音下と吹いていくと、FからFまでの1オクターブで音は13個ですから合計13分かかる。「この13分を長いと考えるか短いと考えるは自分次第です」と。
これを毎日続けるように言いますが、実際に続けてくれる生徒は少ないですね(笑)。でも、Cから下のFまでなら8分で済む。上のFまでなら6分で済みます。月水金は下、火木土は上を吹くことにすればいい。それでも時間がないと言う人は、ランダムに3つの音でも、1つの音でもいい。とにかく楽器を出したら最低1つの音で32秒、できれば13個の音で13分のロングトーン。これを1年間続けてみてください。
「継続は力なり」というのは僕の好きな言葉でもありますが、僕は今も毎日続けています。音1個だけのときも多いですが(笑)。 |
─そのロングトーンの効果は? |
pのロングトーンですから、口の反応が良くないと、息が余っていても音が消えてしまいます。やはりオーケストラで吹いていて何が難しいかというと、「pをもっと落とせ」と言われることですよね。こういうふうに小さな音で長く吹く練習を続けていると、そこがずっと楽になるはずです。
しかも、32秒伸ばそうと思うと、自然に息を吸うようになります。さらに、この練習をしているとものすごくイライラするんです(笑)。だから集中力も付きます。特に若い人たちにとってはね。 |
─やはりpは怖いですか? |
そうですね。だから、指揮者に言われるまでは少し大きめに吹くようにしています。ちょっと姑息な手段ですが(笑)。でも、pって音量ではなくニュアンスだと思うんです。硬い音だと小さく吹いても逆に音が立ってしまうので、ここでも柔らかな音が求められます。絶対的な音量ではなく、音色やニュアンスでpを聴かせるということが大切だと思います。
これはfでも同じことで、力んで大きな音を出しても、遠くまでは届かない。例えばテノール歌手のように、リラックスして息をたっぷり入れて良い音で鳴らすことを意識しています。 |
─曲のさらい方など良いやり方はありませんか。
これもデイビッド先生に習ったことですが、「速いパッセージは後ろからさらえ」と教わりました。難しいパッセージがあった場合、まずパッセージの最後の音を吹く。次にその前の音と2つ吹く。次に3つ、4つと増やして行きますが、各々10回ずつ練習します。ほぼインテンポでOKです。
結局、難しいパッセージって後ろの方でミスることが多いじゃないですか。この練習だと、後ろの方がしっかりと吹けるようになるんです。根気強く練習すれば、全ての音が確実にハマるようになりますよ。もちろん前から、ゆっくりのテンポでさらうのもありだと思いますが。 |
─とても実用的でためになるお話をありがとうございます。 |
─さて、アレキサンダーはいつからお使いですか。 |
高校1年生のときから、103を使っています。ただ、アレキサンダーとの出会いはもっと前で、中学生のときに、アレキサンダーのマウスピース、5番を買いました。そのときに楽器のカタログをもらって来て、以来アレキサンダーというものに漠然と憧れを感じていました。それで高校に入るときに楽器を買ってもらえることになって、何もわからずに楽器屋さんで103の黄色のワンピースを選んだのが最初です。
大学時代に一度赤に変えて、ドイツに留学したときもその楽器でした。それまで正直なところどんな音を目指したらいいかよくわからなかったのですが、ドイツに行ってみたらほとんどの人がアレキサンダーを使っていて、ものすごく明るくてクリアな音をしているんです。それに衝撃を受けて、黄色のラッカー仕上げを買って、今の103が4台目です。103一筋ですね(笑)。 |
─それだけ使い続けている理由はなんでしょう。 |
103の持っている魔法のようなものを感じます。決して扱いやすい楽器ではありませんが、奥が深く、使い手によっても変化するところが魅力ですね。
でも、一番の理由はやはり音色です。明るくて輝く音色を持っています。ホルンは柔らかく吹かなければならないと思っていますが、その中に芯があって、クリアな音が出やすい楽器だと思います。この「芯がある」ことが大事で、ぼやっとした音ではホールの後ろまで音が届かないように思います。 |
─もう1本のアレキサンダー、Bb/ハイFの107Xについては?
107Xは、多分僕が日本で最初に買ったと思います。最初に日本に入ってきた楽器を売っていただきましたから。以前は107を使っていましたが、全く違う楽器ですね。普段はほとんど103を使っているのですが、107はそれとかなり吹奏感が違いました。しかし107XのBb管は103に近い感じになっているのが良いと思って、吹いてすぐに買うことにしました。もちろん、前の107ならではの吹奏感が気に入っている人もいると思います。 |
─音楽以外の趣味は何でしょうか。 |
取り立てて趣味というものは特にないのですが、食べることと寝ることは好きです(笑)。基本的に楽しいことが好きなので、宴会は大好きですが、酒がなくても大丈夫なんです。あとは笑うことですかね。 |
─食べ物に対するこだわりは? |
そういうのも特にないんです。でも空腹が嫌いで、楽器吹くときもげっぷが出たとしてもお腹が空いているよりはましです。でも、今年の目標はダイエットです(笑)。 |
─京都でお薦めのお店や食べ物を教えていただけますか。 |
ラーメンを食べるなら京都だと思っています。美味しいラーメン屋さんが京都には多いです。博多なら「博多ラーメン」というひとつのブランドのようになっていますが、京都には「京都ラーメン」というものはない。でも特に一乗寺あたりにラーメン激戦区があって、こってり系で美味しいお店も多いです。チェーン店でも、天下一品ラーメンとか、餃子の王将は京都発祥です。もちろん京都なので和食の美味しい店もたくさんあるんでしょうが、あまり知らないんです(笑)。 |
─休日はどんなことをしていますか? |
とにかく休みがなくて、楽器を吹いていないときは吹奏楽の指導をしたりとか。どちらも楽しいので、仕事が趣味のようなものですが、でも今年のもう一つの目標は、「休みを作ること」ですかね。 |
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当コーナーの情報はそれぞれ掲載時のものです。
プロフィール等変更となっている場合がございますので予めご了承下さい。 |
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