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2015年7月7日(火)

驚き!“モノを持たない”暮らし

阿部
「モノを持たない人たちについてです。」

いま、書店で大きな話題になっている本が…。
「持たない」暮らしをすすめる書籍の数々。


中でも注目を集めているキーワードが、「ミニマリスト」。
身の回りのモノを限りなく減らし「最小限のモノ」だけで暮らす人々です。
若い世代を中心に、そのライフスタイルが共感を呼んでいます。



ミニマリスト
「自分が(モノを)持っていなくてもいい。」

ミニマリスト
「見えを気にするから余分なコストがかかる。
見えを捨てたい。」

ミニマリスト
「服を9割5分くらい全部捨てて。
モノに支配されず楽に生きられる。」

阿部
「いま、世の中に広がり始めていることばが、こちら『ミニマリスト』です。
『最小限』を意味する『ミニマム』という言葉を使った造語です。」

和久田
「これまで、いらないモノを捨てて片付ける『断捨離』という言葉はみなさん耳にしたことがあるかと思いますが、『ミニマリスト』は、そもそも所有するモノを限りなく減らして暮らそうという人たちです。」

阿部
「今、なぜこの『ミニマリスト』が注目を集めているのでしょうか。
その生活に密着しました。」

“ミニマリスト” 驚きの生活とは…

都内の出版社に勤める、佐々木典士(ささき・ふみお)さん。
自他ともに認める、ミニマリストです。
佐々木さんが暮らすワンルームの部屋には、モノが何も置いてありません。



クローゼットには洋服が僅か6着。
1年間を通して着回します。

ミニマリスト 佐々木典士さん(35)
「野球選手が毎日同じユニフォームを着るイメージ。
私服も同じものを着続ける。」

風呂場に置かれているのは…。
液体石けんひとつだけ。
バスタオルもなく、1枚の手ぬぐいで体を拭いています。

ミニマリスト 佐々木典士さん(35)
「ひとつの液体せっけんで、頭も体も顔も洗い、ひげも剃っている。」

食器や鍋など、絶対に必要なモノ以外は置かないのが暮らしのルールです。
モノを持たない佐々木さんの生活。
しかし、かつては正反対でした。

これは、5年前の佐々木さんの部屋です。
たくさんのモノを買い、本や家具、趣味の小物などが溢れていました。
しかし、どんなにモノに囲まれていても気持ちが満たされることはなかったといいます。

ミニマリスト 佐々木典士さん(35)
「モノをたくさん持っていたけれど、まだ自分には足りないモノばかり。
あれもほしいこれもほしい(という状況)。
モノを持っていたことが苦しかった。」

去年(2014年)インターネットで海外の「ミニマリスト」たちの生活を知り、思い切ってモノを持たない生活にかじを切りました。
モノを減らせば減らすほど、気持ちが楽になっていくのを実感できたといいます。




ミニマリスト 佐々木典士さん(35)
「モノを減らすことで見えてきた豊かさがある。
時間ができた。
精神的に人と比べることもない。
モノが少ないと、いま持っているモノに感謝するようになる、不思議と。」

最低限のモノを選別するライフスタイルは、職場でも実践しています。





同僚の机と比較すると、佐々木さんの机には一切不要なモノが置かれていません。
仕事のやり方そのものも大きく変わりました。
どの情報が本当に必要なのかを選別する意識が高まり、上司からも仕事の効率が上がったと評価されています。



上司
「自分がやるべき仕事をさっとやって、早めに帰る。
効率よくやっている。」



ミニマリスト 佐々木典士さん(35)
「モノを減らしただけなのに、こんなに変化があるんだなと自分でも驚き。
何が大事なのか、何が本質なのか、自分に問いかける癖ができたと思う。」

若い世代に広がる“ミニマリスト”

モノを持たない暮らし。
そのライフスタイルは、若い世代に少しずつ広がっています。

180人が暮らすアパートです。
入居者の1人、IT企業に勤める植田淳平(うえだ・じゅんぺい)さん。
1年半前、わずかな荷物と共にこの6畳の部屋に引っ越してきました。

ミニマリスト 植田淳平さん(35)
「スーツケース2つで、荷物をちょっと整理して来た。」

アパートには、入居者が自由に使える広いラウンジ。





そして5つのキッチンがあり、調理器具も用意されています。
モノやスペースを住民が積極的に共有することで、“持たない暮らし”を実現しています。
アパートには、こうした生活に関心を持つさまざまな職種や価値観の人たちが集まっています。
モノに囲まれた生活よりも、人と交流し、時間を共有することが大きな刺激になると植田さんは考えています。

ミニマリスト 植田淳平さん(35)
「持つことに対してあんまり興味がない。
持たない方が身軽。
年上の方、違う業種の方の意見やアドバイスはすごく身になっている。」


広がるミニマリスト生活。
若者の消費行動に詳しい専門家は、景気の変化に関わらず、今後社会に定着していくと指摘します。

博報堂 若者研究所 原田曜平さん
「(昔の)若者は見えを張って、身の丈以上の車、ブランド品を買って優越感を得ていた。
一方、若い人たちは買いたいという感覚ではなく、基本的には抑える方向で生きている。
別に無理しているわけではなく、それである程度満足。
持つことの価値が相対的に下がっている。」

不便?満足? “ミニマリスト”生活

阿部
「取材にあたった木下ディレクターです。
改めて、こんな暮らしかたがあるとはびっくりですね。
モノや消費に対する考えが全く違うことに驚くんですが、取材してみてどうでしたか?」

木下ディレクター
「今回取材した方は30代で、私と同世代です。
モノがない暮らしということで、最初は不便なところも多いのかと思ったのですが、それ以上に日々の生活に充足感を感じていらして、話を聞いていると非常に共感する部分が多くありました。
実際に、最初に紹介した佐々木さんは、みずからの体験をもとに本も執筆していまして、読者からの反響も大きいということです。」

和久田
「でも最小限のモノだけで暮らすというのはそう簡単じゃないと思うんですが、いま、なぜこうしたライフスタイルが広がっているのでしょうか?」

木下ディレクター
「実際にこれを実践するのはとても難しいですよね。
例えば年配の方の中には、私の親もそうなんですが、“いつか使うかもしれない”とか、“愛着があるから捨てきれない”といった理由で、ついついモノをため込んでしまう人も少なくないと思います。
一方、若い世代では、モノや情報があふれる時代に育ってきたからこそ、逆に思い切って生活をシンプルにして、自分にとって一番大切なものは何か知りたいという欲求が高まっていると思います。
こうした価値観がミニマリストという人たちを生んでいるのではないかと感じました。」