コラム:中国株急落で深く傷ついた共産党の威信

2015年 07月 10日 17:27 JST
 
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Peter Thal Larsen

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 今回の中国株急落の影響は、揺れ動く市場そのものを越えて、はるか遠くにまで及びそうだ。1カ月にわたる株安は政府が最近打ち出した市場原理導入の方針に疑問を投げかけ、政府はそのぶざまな対応ぶりから金融システムの統制力が限られることが露わになった。

今後は広範囲にわたる改革が苦境に陥るだろう。全体像をある程度把握する必要がある。株式市場の下落は劇的だ。9日の上海/深センCSI300指数は高値から28%下げた。ただ、その直接的な影響は対処可能なはずだ。同指数は3月末の水準に戻っただけで、年初来ではなおプラス圏を保っている。

3兆ドルの富が吹き飛んだという主張は、中国の株式市場では時価総額全体の約40%分の株しか自由に取引されていないという事実に目をつぶっている。残りの株は経営権を握っている投資家が保有し、その大部分は政府機関だ。クレディ・スイスによると、中国の家計資産のうち株式の占める比率は9.4%にすぎず、銀行預金や不動産の方がはるかに重要だ。

しかしだからといって当局は強力な市場テコ入れ策を止めたりはしなかった。証券監督管理委員会の肖鋼委員長と中国人民銀行(中央銀行)の習小川総裁はこの2週間に金利の引き下げや新規株式公開(IPO)の認可停止など対応策を次々と打ち出した。最も注目を集めたのは大量に株式を保有する株主を対象に6カ月間売却を禁じた措置。さらに大手証券は中銀の支援を受けて、中国株式市場を下支えるため総額1200億元(190億ドル)相当の資金を株式投資に充てると発表した。

非当事者の大多数は、当局がバブル状態の市場を支える必要があると感じたことに当惑した。株式市場の状態は、わずか数週間で財を成すことが可能であり、出来高は驚異的で、農家や年金受給者が実体の不明瞭な銘柄に資金を投じていたのだから。

<決定的な役割>

中国当局が懸念するのは、信用取引を行ってる投資家が借り入れ資金の返済に窮し、広範な金融危機を誘発する展開だ。公式統計によると証拠金残高はピーク時で2兆3000億元で、管理可能な水準に見える。しかし一部の投機筋は住宅ローンや「影の銀行」から借り入れた資金を投資に回している。この数カ月は企業が株式を担保に充てるケースも増えている。   続く...


 
 
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