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シェアサイクル 自転車借り、気軽に東京都心を走る
街をスイスイ、「一筆書き」で乗り継ぐ

2015/7/4付
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 職場近くの公園に、見慣れない赤い自転車が何台もとめてあった。一定の身長があれば有料で使える「シェアサイクル」。東京都ではいくつかの区が導入済みで、区の境界を越えて相互に借りたり返したりできるようにする計画もあるという。どのくらい便利なのか使ってみた。

 現在は江東区と港区が区内一部エリアで、千代田区が全域で、それぞれ同じ仕組みのシェアサイクルを実施している。今秋に開始予定の中央区も含め、4区が来年度には相互乗り入れする計画。ふだんは鉄道や地下鉄で移動しているが、稼働中の各区のシェアサイクルを「一筆書き」のように乗り継いだら、どこまで行けるだろうか。

■同じ自転車とよくすれ違う

 6月中旬のある日、午前7時。お台場の端、テレコムセンター近くの「ステーション」で江東区のシェアサイクルを借りた。ステーションとは自転車を借りたり、返したりする拠点。江東区内には20カ所以上あり、どこでも“乗り捨て”できる。事故に遭わないよう交通安全に十分配慮しながら、中央区との境近く、豊洲の拠点へこぎ出した。

 土地が比較的平らな埋め立て地なのでスイスイ進む。意外なのは同じ赤い自転車とよくすれ違うことだ。通勤姿が多い。江東区は2012年秋スタートの最古参だけに、地元に定着していると感じた。44分で目指す豊洲に到着。スマートフォン(スマホ)のアプリでログを確認すると、走行距離6.9キロメートル、平均速度は時速10キロメートルだった。

 区外にも出られるが、返却は借りた区でしなければならない。次の目的地は千代田区南端の拠点、有楽町の東京国際フォーラム。江東区と千代田区の間にある中央区はサービスが始まっていない。一筆書きにするため、江東区の自転車で有楽町へ行き、拠点を確認してから豊洲へ戻ることにした。

 外国人観光客でにぎわう築地、銀座通りを過ぎて午前10時、有楽町についた。1時間ほどで豊洲に戻り自転車を返した。地下鉄で有楽町に戻ると本降りの雨。たびたび悩まされることになる空模様の最初の洗礼だ。ここは無理せず天候の回復を待った。

 困難はもう一つあった。サドルに当たる尻の痛みだ。銀座に差し掛かる頃にはじわじわ痛みを感じ始めた。後日、自転車ライターの山本修二さんに聞くと、原因の一つは地面からの突き上げだという。「路上の段差などは左右のペダルを水平にして、腰を浮かせて振動を吸収する」。実践すると痛みがぐっと減った。

 秋葉原、本郷、飯田橋、四谷、赤坂……。こぎながら感じるのは東京の変貌だ。あちこち工事中で、記憶にある古い景色が塗り替えられていくような感覚がある。そんな発見も自転車移動ならではだ。

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 新橋で港区の自転車に乗り換え、品川を目指す。時刻は午後3時すぎ。飯倉の交差点に上る坂でついに音を上げ、これまで使わなかった電動アシスト機能(今回走った区の自転車で利用できる)を使った。当初は世田谷方面をこの日のゴールと考えていたが、雨やどりのロスもあって1日では無理と悟った。結局、別システムの世田谷区のサービスを含め、2日間で100キロメートル近くを走った。

 4区の乗り入れは区と東京都が協議中。東京駅など都心各所や、観光地が多い臨海部で自在に乗り降りできるようになれば想像以上に便利で、環境や健康にも良さそうだ。「利便性が高いステーション用地を確保できるか」(都環境都市づくり課)など課題もあるが、東京五輪のころには、パリなど欧州各地のようにシェアサイクルが盛んに利用されているかもしれない。

 車両の盗難防止や課金など技術的な問題を改善したのはNTTドコモ子会社のドコモ・バイクシェア(東京・千代田)のシステム。1台ずつ通信ユニットが搭載され、全地球測位システム(GPS)で解錠・施錠や利用時間に応じた課金が管理される。港区は30分108円、江東区と千代田区は同162円。料金は事前登録したクレジットカードやSuica(スイカ)などの交通系ICカードで支払う仕組みだ。

■地下鉄より早く目的地に着いた

 カギは手元のスマホに届く4桁の暗証番号で簡単に開閉できる。坪谷寿一社長は「ステーションの工事も不要。通信ユニットは自転車以外にも付けられる」と話す。使いたいときにすぐ使える仕組みが整うと、公共交通機関とも競争できるかもしれない。

 そんなことを考えたらどうしても確かめたくなった。「地下鉄より速いのでは?」。

 そこで大手町の職場から溜池山王の取材先までドア・トゥ・ドアで、シェアサイクルと地下鉄の所要時間を比べた。結果は、自転車が貸し出し・返却の時間を含め25分41秒に対し、地下鉄利用は26分24秒。料金は自転車が162円で地下鉄(170円)よりわずかに安い。これなら十分選択肢になる。

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車道の路側帯を塗り分けた自転車レーン(東京都品川区)
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車道の路側帯を塗り分けた自転車レーン(東京都品川区)


記者のつぶやき
■車・歩行者との共生必要
 シェアサイクルは東京以外にもあることを知った。旅先の楽しみとして覚えておきたい。ただ、乗っていて強く感じたのが、自転車が路上でいかに曖昧な立場かということ。それに伴う危険を避けるのはなかなか大変だ。車道では路側帯の駐車に悩まされ、やむなく歩道に上がれば“歩きスマホ”の歩行者にことさら神経を使う。
 先月、自転車の危険運転への罰則が強化された。都によると3区のシェアサイクルで事故は発生していないが、加害者、被害者いずれになるのも避けるために安全運転を心がけたい。走って分かったが、自転車専用レーンも増えている模様。歩行者、自動車との共生を強く意識しよう。
(天野賢一)

[日経プラスワン2015年7月4日付]

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