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 捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)端末をひそかに取り付ける捜査は「重大な違法」とされた連続窃盗事件で、GPS端末を取り付けられた車19台のうち1台は、事件とは無関係の女性会社員(24)の乗用車だった。女性は岩切勝志被告(44)と交際していたが、事件に関与しているとは知らなかったという。警察から自分の行動を把握されていたと知った時の衝撃を取材に語った。

 「あなたの車にも端末が付けられていたようです」。女性は、被告の弁護人からGPS捜査の検索履歴を見せられた。そこには13年11月、女性が車で大阪府内の自宅や実家に行ったり、友人宅に立ち寄ったりした時のものと一致する日時や居どころが克明に記録されていた。「言葉が出ないほどショックやった」

 思い当たるふしがある。被告が12月に逮捕される直前、自宅近くのコンビニ店駐車場に車を止めて外に出た時、隣に止まる灰色の車の中から様子をうかがう鋭い目つきの中年男性2人がいた。「あれは捜査員やったんか……」

 ずっと警察官に監視されていたと知り、全身が「ぞわっ」と震えた。家族や友人まで巻き込んでしまったと感じ、胸が痛んだ。今も車に乗るたび、誰かに見られているのではと疑い、バックミラーで後続車の人を確かめてしまう。

 「いくら捜査のためでも、こんなやり方はおかしい」と女性は憤る。「権力によるプライバシーの侵害を許さないよう、第三者がきっちりチェックする仕組みを作ってほしい」

■大阪府警「やみくもな装着ではない」

 「女性は結果的に無関係だったが、やみくもな装着ではない」。大阪府警幹部は女性の車にGPS端末を取り付けた正当性を強調する。別の幹部も「容疑者と接触が多い人への取り付けを制限すれば、容疑者を利する結果になる」と話す。

 担当捜査員は今年3月、公判で証人尋問に立ち、「被告が逃げる際に女性の車を使う蓋然(がいぜん)性(確からしさ)が高いと判断した」と証言。被告らが使う建物に女性も出入りするのを見て、事件との関係を疑ったという。だが、被告が女性の車を使う場面は「確認したことがない」と述べた。