今の政権になってから、言論への干渉がかなり露骨になっている。お隣、中国のことだ。去年あたりは「七不講」がニュースになった。人権などの普遍的価値や報道の自由、共産党の歴史的過ちといった七つの内容を、大学で講じるのを禁じたと聞いて驚いたものだ▼ひるがえって比べれば、この国の自由はありがたい。しかし不穏な雲も湧き出してくる。せんだっても自民党の国会議員が、意に沿わないマスコミを懲らしめろという趣旨の発言をして反発が起きた▼ことがらは違うが、これも「懲らしめろ」の発想だろうか。自民党が安倍首相に、18歳からの選挙権をめぐって提言した。高校教員に政治的中立を求め、逸脱したら罰則を科すように促す内容という▼若い有権者を迎え、よりよい主権者教育を考えようというときに、まず懲罰を持ち出す発想が寒々しい。合言葉のように中立と言うが、何をもって逸脱とするのか、はっきりした線は引けそうにない▼たとえばの話、民主主義は少数意見を尊重しなくてはならぬと丁寧に教えたとしよう。数で押し切る政権には偏向に映るかもしれない。それでなくても中立という言葉は呪縛感をもたらす。罰則で強めれば「物言えば唇寒し」で、学びの場は縮こまってしまう▼提言が実現しなくても、こうした動きそのものが心理的な介入になろう。聞けば民主党の支持組織である日教組を牽制(けんせい)する意味もあるという。もっとおおらかに前向きに、10代の政治参加を歓迎できないものか。
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