憲法が求める「投票価値の平等」より、自民党あるいは自民党参院議員の保身を優先したと言わざるを得ない。

 参院の「一票の格差」を正す選挙制度改革について、自民党はきのう、鳥取と島根、徳島と高知をそれぞれ「合区」し、これまで主張してきた「6増6減」とあわせ、最終的に「10増10減」とする案を決め、維新の党など野党4党と合意した。

 自民党はこれまで「6増6減」のみを示し、合区には及び腰で来た。議席ゼロとなる県が出かねないからだ。

 しかし、「6増6減」だと最大格差は最高裁が「違憲状態」と判断した前回参院選の4・77倍とほとんど変わらない。改革の名に値するはずもない。

 自民党は今回、維新など野党4党の案に乗る形で、ようやく「合区」に踏み出した。人口の少ない県を一つにまとめ、新たな選挙区をつくるのは憲政史上初めてだ。

 ただ、自民党案だと最大格差は2・974倍にもなる。

 今回の改革論議は、最高裁に都道府県単位の区割りを見直す必要性を指摘されたことを受けて始まった。各会派の代表でつくる「選挙制度協議会」の議論では、一票の格差は2倍以内が望ましいという会派が多数を占めていたはずだ。

 その点で、民主、公明両党が合意した「10合区」案は、最大格差を1・953倍と、2倍以内に抑えられる。

 少なくとも、最大格差を小さくするという点では、民主、公明案の方が「よりまし」なのは明らかだ。

 議員の数では、自民党と維新など4党の方が民主、公明両党より多い。自民党は今後、両党に「2合区」案への賛成を呼びかける方針だが、翻意すべきは自民党の方である。

 選挙制度は党派を超えた合意の下に決めることが望ましい。数の力で「より劣る」案を押し通せば、国民の代表たる参院議員の正統性に傷がつく。

 そもそも参院の選挙制度は衆院と重なり、政党色も強まっている。二院制の下で、衆院と参院がどう役割分担をすべきか。どんな選挙制度なら、衆院と異なる参院の存在意義を示せるのか。そんな議論を尽くしたうえで、両院の選挙制度をセットで見直すべきなのだ。

 それなのに、数合わせに終始する選挙制度改革を、何度見せつけられてきたことか。

 自らに甘く、合意形成の手間を惜しむ政治の姿勢がどれほどの政治不信を招いているか、厳に自覚すべきである。