斉藤寛子
2015年7月9日10時10分
広島や長崎で70年前の夏、聴覚に障害のある人たちが何も聞こえないまま被爆した。何が起きたのかを知ることも難しかった。その体験を伝えようと、聴覚に障害のある俳優らが演劇を制作。7月、東京や広島、長崎で上演する。
広島で被爆したろう者を取材する女性編集者。壮絶な被爆体験を聞くうち、疎遠になっていた母のことを思い起こす。母もろう者で生後間もなく長崎で被爆している。体験を聞くため帰郷すると――。
舞台「残夏(ざんげ)―1945―」。手話やダンスと音楽を組み合わせて演じる劇団「サイン アート プロジェクト.アジアン」が制作した。出演者9人のうち代表の大橋ひろえさん(44)ら5人がろう者だ。
大橋さんは生まれつき耳が聞こえないが、小学校から高校まで健常者と同じ学校に通った。戦争や原爆のことは授業で勉強した、と思い込んでいた。しかし、2年前に広島の被爆ろう者の証言集「生きて愛して」(仲川文江著)を読み、衝撃を受けた。「原爆がどんなに恐ろしいものだったのか。ろう者の視点で書かれた証言集で初めて理解できた」
その年、この証言集などをもとに構成・脚色した手話朗読劇を上演した。聴覚に障害のある観客から「原爆についてもっと知りたい」との声が多く寄せられた。被爆ろう者に直接話を聞き、その体験を舞台にしようと考えたが、高齢の被爆者たちから話を直接聞く機会は得られなかった。
広島や長崎を訪れて原爆について学び、証言集を書いた仲川さんに会って話を聞いた。「聞こえないからと、今まで分からないことをあいまいなままにしていた」。今回の舞台のタイトル「残夏(ざんげ)」には、自分が原爆のことをきちんと知ろうとしなかったことへの「懺悔(ざんげ)」の意味も込めたという。
公演では、舞台中央に字幕装置を置き、音声ガイドや写真入りの台本も貸し出す。聴覚や視覚に障害のある人たちにも内容を理解してほしいからだ。「分からないまま帰ってほしくない。戦争の恐ろしさを心で理解してほしい」
9~12日、東京都杉並区の「座・高円寺2」で。前売り券は一般3900円、65歳以上と学生3500円、高校生以下2800円。当日券は500円増し。18日は広島市東区民文化センター大ホール、25日は長崎市チトセピアホールで公演する。問い合わせは劇団(メールはzanka1945@gmail.com、ファクスは03・3323・8433、電話は0120・240・540)。(斉藤寛子)
おすすめコンテンツ
PR比べてお得!