女の子は羽がありませんでしたが両親に大切に育てられました。
女の子は時折、羽がなくて不便だと感じていました。
飛べば一瞬でつくようなところを、とても時間をかけて歩かなければいけないのです。
高いところに登るのにはハシゴを掛けたり、誰も使わない階段を使わなければいけないのです。
それでも、女の子には優しくしてくれる両親やお友達がいましたし、自分に自信がありました。
飛ぶのを前提にして街はできているので、とても狭くてデコボコした道を羽のない女の子は歩きます。
途中、女の子と同じように羽のない、女の子よりも少し小さい男の子がひとりで本を読んでいました。
男の子の顔は本の方を向いているので、よく見えません。
男の子の座っている地面の周りには白い粉がポツポツと落ちていました。
「ひとりでいるの」
「うん」
「ここは夜になるとすごく暗くなるから、早く帰ったほうがいいよ」
「うん」
「お家はどこにあるの?」
「向こう」
向こうの方には孤児院があって、そこでは同じように羽のない子が住んでいると両親が言っていたのを思い出しました。
「うん」
男の子が顔を上げました。
酷い皮膚病だったのです。
地面に落ちていた白い粉は男の子の皮膚。
「羽がなくても可愛い顔の子からみんな貰われていったんだよ お姉さんみたいな可愛い顔をしている子から」
「顔は治らないの?」
「治るなら今ここになんかいないよ」
「私も羽がないよ 一緒に頑張ろ」
男の子は女の子の顔を一発殴ると、孤児院とは反対の方向へ走って行ってしまいました。
女の子は少し怖かったと思いながら家に帰りました。
それから何ヶ月もたちました。
普段お友達は、黄色いクリームのケーキを食べているというのです。
その翌朝、女の子は鏡を見ると、額の部分に数枚の鱗が生えているのを見つけました。
急に、女の子は怖くなりました。
みんなから酷く嫌われる。両親からも捨てられて白いケーキが食べられなくなる。あんな醜くなるのは嫌。