岩手中2自殺:生活ノートに記された気持ち…担任報告せず
毎日新聞 2015年07月09日 11時00分
岩手県矢巾(やはば)町の中学2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺したとみられる問題で、生徒がいじめを訴え自殺を担任教諭にほのめかしながら、学年主任や同僚教員も把握していなかったことが、町教育委員会への取材で分かった。2013年施行のいじめ防止対策推進法では、いじめが確認された場合、複数の教職員による対応を求めているが、実施されていなかった可能性が高い。
生徒が通っていた中学では、担任が生徒と「生活記録ノート」をやりとりし、生活状況を把握している。生徒は5月以降、他の生徒から蹴られたり、首を絞められたりしていることをノートに記していた。自殺前の6月末には「もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」などと自殺をほのめかす記述もあった。
中学は同法に基づき、「いじめ防止に関する基本方針」を作成。早期発見のため、生活ノートを活用するとしていた。さらに、いじめを発見したり、通報を受けたりした場合、校長らでつくる「いじめ対策委員会」を開き、校長以下全教員で共通理解を持って対応することになっていた。
しかし町教委によると、ノート内容については担任から学年主任への報告もなかった。同僚教員にも担任からいじめの可能性があると聞いた人はいないという。
同法やその基本方針を教員に周知させる研修などの実施に関し、町教委は関与しておらず、各校の判断に委ねられていた。町教委学務課の立花常喜課長は「他の教員らと情報共有し、ステップを踏んで対応すべきだった」と話している。【近藤綾加】
◇いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の小森美登里理事の話
ノートは「死なないから助けて」という訴えに読め、誰も助けてくれない絶望が死のきっかけとなったように思う。法律はできても先生のいじめ対応スキルは上がっていないし、いじめがあること自体を問題視する風潮が抜けきれていないのではないか。