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【社会】

新国立の都負担500億円根拠は 「何となく」

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 新国立競技場建設の費用負担をめぐり八日、国と東京都が事務レベル協議を始めることを決めたが、都の負担額で調整の軸となるのは、国が要請してきた約五百億円だ。大会組織委員会会長の森喜朗元首相は石原慎太郎元知事の時代から都に負担を要請してきたとするが、石原氏は本紙の取材に「(森氏と)話したことはない」と明言。納税者の目が届かないところで、何が決められてきたのか。 (北爪三記、沢田敦)

 「東京都も少し負担してくれてもいいんじゃないかという話になったのは石原さんの時代からなんです」。森氏は六月三日に都内で開かれた講演で、費用負担の経緯を語りだした。日本体育協会長を務めていた森氏は、当時の石原知事と頻繁に会っていたという。

 五輪招致に失敗した二〇一六年大会は、都が主会場を中央区晴海に建設する計画だった。国際オリンピック委員会に提出した立候補ファイルによると、建設工事費は八百九十八億円。「その時は国と都で折半ですね、という話になっていた」(森氏)

 二〇年大会の主会場は、建て直すことが決まった国立競技場を使うことになった。森氏は、当時の試算を一千億〜千五百億円として「折半から『東京都は三分の一ぐらいかな』という話が、今でも何となく五百億(という話)で残っている」と話した。

 さらに、この話は石原元知事の後継・猪瀬直樹前知事と下村博文文部科学相の間でも「数回話し合われている」とも。猪瀬前知事は本紙の取材に、一三年十一月の会談で下村文科相から費用負担の要請はあったとしつつ「国立である以上、国が当然負担すべきもの。競技場本体の工事費を都は負担できない、と答えた。何の約束もしていない」と話している。

 文科省も都をあてにしていた。同省関係者によると、新競技場の基本設計で算出した総工費千六百二十五億円の財源は当初から国と都、スポーツ振興くじ「toto」の売り上げから三分の一、約五百億円ずつを充てる想定だった。同省は都が負担すべき額を周辺整備費などから五百八十億円と試算したが、これも約五百億円の負担ありきの数字だという。

 都に負担を求めるため、既に法整備にも着手している。一三年五月に新競技場の事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)法を改正し「地方公共団体がセンターに出資できる」と定めた。舛添要一知事の反発を受け、文科省は同法の再改正も検討したが、遠藤利明五輪相は八日、「法改正を含めてどれが一番いいのか、最終的に私と知事で判断する」と述べた。

 

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