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池田屋事件「階段落ち」は創作 幕末の転機、真相に迫る

池田屋事件を伝える石碑。「当時の長州が使うのは明保野亭などが多く、桂や久坂玄瑞の手紙には池田屋を集会場所とした史料はありません。当時はさほど大きい店ではなかったのでしょう」と中村さん(京都市中京区三条通木屋町西入ル)
池田屋事件を伝える石碑。「当時の長州が使うのは明保野亭などが多く、桂や久坂玄瑞の手紙には池田屋を集会場所とした史料はありません。当時はさほど大きい店ではなかったのでしょう」と中村さん(京都市中京区三条通木屋町西入ル)

 幕末の京都、新選組が志士の密談に討ち入った「池田屋事件」が当時の祇園祭宵山前日にあたる1864年7月8日(元治元年6月5日)に起こった。今年のNHK大河ドラマは長州藩がテーマ。あらためて注目され、ドラマや小説の定番となっている事件の真相はいかに?多くの史料から事件の真相に迫った書籍「池田屋事件の研究」(講談社現代新書)の著者、歴史地理史学者の中村武生さん(47)に聞いた。

■古高は長州側の重要人物

 -新選組が逮捕し、事件の発端となった古高俊太郎とは何者か?

 「古高は近江国栗太郡古高村(滋賀県守山市)出身で、四条小橋西詰真町の薪炭商・枡屋喜右衛門という筑前黒田家の御用達商人です。有栖川宮家出身の人物が入った門跡寺院の毘沙門堂(京都市山科区)にも仕え、公家や大名の屋敷に出入りしていた。長州が京都から政治的に追われる八・一八の政変後、宮家とのパイプが絶たれた長州には重要な人物でした。また、古高の母方の祖父の後妻が昔、徳山毛利家に仕えて当主の男児を産んでいる。毛利家の遠縁でもあったのです」

 -新選組による取り調べの内容は?

 「事件当日の可能性が高い古高の供述を記した『新撰組より差出候書付写』によると、政変の黒幕だった中川宮邸の放火計画などを自白しました。古高は長州藩士などを宮家や公家屋敷に潜入させて情報を得られるように協力していた。それほどの機密を知る人物だからこそ奪還が必要だった。ドラマでは逆さにつるす拷問が見られますが、具体的な拷問内容は不明です」

 -新選組が池田屋を突き止める経緯は?

 「山崎烝(すすむ)が諜報(ちょうほう)で突き止めた話はフィクションです。京に不穏な噂(うわさ)が流れる中、池田屋襲撃前から新選組は20カ所ほど浪士の潜伏地を把握していました。その一つの古高邸から武器や密書が見つかった。近藤勇は緊急性を感じて会津藩や桑名藩に知らせています」

■やはり桂は逃げた

 -池田屋襲撃時、長州の桂小五郎や吉田稔麿(としまろ)はいたのか?

 「桂は早く来すぎたため、対馬藩邸に行ったと自叙伝にあります。しかし、長州藩邸のトップ乃美織江(のみおりえ)による手記やほかの史料から判断すると、桂は2階から屋根を伝って逃げたと考えるのが妥当です。吉田は当日の行動が分かる関係者の手紙によると、襲撃時には池田屋にいない。長州藩邸のすぐ近くの加賀藩邸前で死にました。藩邸から池田屋への途中で囲まれて切られたと判断します」

 -池田屋内での戦闘の内容は?

 「有名な階段落ちはフィクションです。永倉新八の手記などから戦闘時間は2時間で討ち入ったのは近藤と永倉、沖田総司、藤堂平助の4人。浪士側は10人ほどで犠牲者数は5人と考えられます。沖田の喀血(かっけつ)が通説となっていますが、永倉は持病が出て戦線離脱したとして、血を吐いたとは書いていません」

■会津、長州との全面戦争を決意

 -池田屋事件の歴史的な意義は?

 「当夜、会津や桑名藩は大砲などを使い、長州と合戦するつもりでした。でも長州の京都留守居役乃美織江が挑発に応じなかったため開戦が避けられた。池田屋事件は、単に新選組を有名にした事件ではなく、その上部組織の京都守護職会津松平家が、禁門の変や長州戦争を経て戊辰の会津戦争に至る長州毛利家との全面戦争を決意した事件と位置付けられます」

■慶喜は配下の裏切り警戒

 -最近、事件で分かってきたことは?

 「徳川慶喜が事件後、福井藩の松平春嶽に『総責任者として浪士を討った』と手紙を書いています。慶喜は事件を指揮した主人公ですが、ほとんど兵を出していない。配下に水戸者が多いので長州側につきかねないため、会津からの要請で形程度の出兵となりました。兵の少なさは慶喜が浪士の一斉検挙に消極的だった訳ではないことが分かります」

 <池田屋事件> 元治元年6月5日、宮部鼎蔵や望月亀弥太ら肥後や土佐、長州などの志士が、捕らわれた古高俊太郎の奪還計画を密談していた三条小橋近くの池田屋を新選組が襲撃した事件に始まる数日間の浪士一斉検挙を指す。

【 2015年07月08日 11時54分 】

ニュース写真

  • 池田屋事件を伝える石碑。「当時の長州が使うのは明保野亭などが多く、桂や久坂玄瑞の手紙には池田屋を集会場所とした史料はありません。当時はさほど大きい店ではなかったのでしょう」と中村さん(京都市中京区三条通木屋町西入ル)
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