おしゃれなカフェなどが立ち並ぶ神戸・旧居留地が“関西アウトドアの聖地”として注目を集めている。半径150メートルの範囲に、アウトドアやスポーツ関連ブランドの旗艦店が少なくとも9店。ここまでの集積は全国的にも珍しいといい、日本の近代登山発祥の地でもある神戸の土地柄も影響しているようだ。(中務庸子)
こうしたブランドの旧居留地への進出は1995年9月、米国の「エル・エル・ビーン」が最初。首都圏の3店に続く関西初出店の場に神戸を選んだ。
「海外文化を受け入れた町並みが残り、なじみやすいと考えた。当社の通信販売の顧客に神戸在住者が多く、開店時には行列ができた」と同社の担当者。売り場面積は約千平方メートルに上り、同ブランドとしては国内最大だ。
その後、2000年代前半には他の外資系ブランドが追随。「モンベル」など国内組も続いた。10年前後には喫茶スペースを併設した出店もあり、こうした店舗はそれぞれのブランドで関西屈指の売り上げ規模を誇る。
11年に出店した「コロンビア」の担当者は「店が集まることで相乗効果が生まれている」と分析。その上で「関西のアウトドアブランドの聖地は旧居留地です」と言い切る。
神戸では1924(大正13)年、阪神間の登山愛好家がロッククライミングクラブ(RCC)を結成。芦屋ロックガーデンなど六甲山系を活動の場に、ザイルなど西洋の登山用品を使った岩場登りの技術を全国に広めた。RCCは32年に解散したが、戦後、東京で復活。神戸は近代登山の国内発祥の地として今でも愛好家が多く集まる。
「ザ・ノース・フェイス」などを運営するゴールドウイン(東京)広報担当の宮崎浩さんは「普段からアウトドアウエアを着用する人が増える中、神戸ではおしゃれな着こなしが目立つ」と話す。神戸での品ぞろえは町並みとの一体感を意識しているという。
【伝統受け継ぎ成熟】
アウトドア雑誌「BE-PAL」の大澤竜二編集長の話 有名アウトドアブランドが集積している地域は全国的にも珍しいが、神戸なら当然。日本で初めて近代登山が勃興し、西洋の登山用品がいち早くもたらされた歴史があるからだ。都市と自然との距離が近く、特に六甲山は初心者でも楽しみやすい。伝統を背景にアウトドアのまちとして成熟していくだろう。