日本企業の世界シェア調査。トップ品目も多いが、縮小市場・低付加価値が目立つ
日本経済新聞社は2015年7月5日、2014年における主要商品・サービスシェア調査の結果を発表した。調査対象となった50品目のうち、日本企業は9品目で首位だったが、低付加価値製品や縮小する市場でのシェア拡大が目立ち、成長市場を取り込めていない現状が浮き彫りとなった。
首位となったのは、炭素繊維、自動車、レンズ交換式カメラ、マイコン、産業用ロボットなど。このうち、産業用ロボットは、かなり以前から日本のシェアは断トツであり、最近の特徴というわけではない。自動車も似たような状況といってよいだろう。一方、炭素繊維については、東レがボーイング向けの大量受注を獲得するなど、成長市場で高いシェアを獲得できた例といえる。
だが、それ以外の品目を見ると、マイコンや白色LEDなど、付加価値が低い分野も目立つ。ルネサスは一時は経営危機に陥った企業であり、シェアが1位でも、利益には結びついていない。
また、デジタルカメラとレンズ交換式カメラの分野では、依然としてキャノンとニコンが高いシェアだが、デジタルカメラの市場規模は1年間で35%も縮小、レンズ交換式カメラも17%の低下となった。ソニーのゲーム機器も43%のシェアだが、市場そのものはスマホに押され13%も減っている。
3日に発表された2015年版通商白書では、日本企業の収益力に関する課題が列挙されている。多角的事業を行っている日本企業の収益性は突出して低く、米国企業の4割、欧州企業の半分、アジア企業の6割にとどまっている。
営業利益率10%未満の事業が全体の9割を占めており、ほとんど儲かっていない状況が続く。中国向けの輸出についてドイツ企業と日本企業を比較した調査では、数量・価格とも上昇している品目が多いドイツ企業に比べて、日本企業は数量は増加しても、単価が上昇していない。つまり日本企業の競争力は、ドイツ企業よりも低いということになる。
日本がすでに高付加価値型の産業構造から転落しているという現実は、かなり以前から指摘されているが、国内における自覚は薄い。今のところ円安によって見かけ上の売上げと利益は増加しているが、それは本質的な収益力の拡大ではない。
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