仕事のストレスなどで「心の病」を患い、労働災害と認定される人の数が過去最多を更新し続けている。長時間労働が影響しているものも多く、職場環境の改善が待ったなしだ。
 
 厚生労働省によると、二〇一四年度の精神障害による労働災害の請求は前年度よりも四十七人多い、千四百五十六人。認定された人は六十一人増え、四百九十七人だった。そのうち過労自殺の認定は未遂も含め前年度よりも三十六人多い、九十九人だった。
 
 年代別では、働き盛りの三十代、四十代が多い。原因別にみると、「嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」「一カ月に八十時間以上の時間外労働を行った」「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が目立って多かった。
 
 業種別にみると、運送業や福祉・介護が上位にきている。
 
 体の病でも、脳・心臓疾患で一四年度に労災認定されたのは二百七十七人で、高止まりしている。
 
 心の病で労災認定された人のうち、「過労死の危険ライン」とされる時間外労働、月八十時間以上の人は四割を占めている。百六十時間以上の人も一割強いた。
 
 国際労働機関(ILO)によると、週あたり四十九時間以上働いている長時間労働者の比率は、日本は23%と、英国、フランス、ドイツの倍に上っている。長時間労働の是正は急務だ。
 
 こうした事態を受け昨年、過労死防止対策推進法が施行された。厚労省の協議会は、二〇年までに週六十時間以上働く人の割合を5%以下にすることなどの数値目標を盛り込んだ大綱素案をまとめた。週六十時間以上働いている人の割合は三十代男性で17%に達し、全体で四百六十八万人の「過労死予備軍」がいるとされる。
 
 今年十二月からは五十人以上の従業員がいる企業には、心理的な負担の程度を検査する「ストレスチェック」の実施が義務付けられる。年一回、従業員に「ひどく疲れていないか」「職場の雰囲気は友好的か」などの質問をし、ストレスの度合いを調べる。部や課などの集団ごとの従業員の状況を分析し、問題があれば職場環境を改善することも求める。
 
 しかし、一連の対策に逆行するのが、今国会に提出された「残業代ゼロ法案」だ。一日八時間の時間規制の適用が除外され、労働組合などは「過労死促進法案」と批判する。
 
 働く人の命や健康を脅かす法案を成立させてはならない。
 
 
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