2015-07-09

羽がない子

女の子は羽がありませんでしたが大事にだいじに育てられました。

とても素直で優しい子になりました。

だけど、小学生ころになると少し変わってきました。

女の子は時折、羽がなくて不便だと思うようになったのです。

高いところに登るのにもハシゴを掛けたり、誰も使わない階段を使わなければいけないのです。

友達と遊びに行く時も、みんなを歩かせてしまうのです。

羽のある子にとっては飛ぶほうが楽に、早く目的地に着きます

女の子は優しいので、みんなに迷惑をかけてはいけないと思いました。

から自然とみんなと交わるのを避けるようになりました。

だけど、みんな優しくしてくれるのです。

女の子は少し心に引っかかるものがありましたが幸せでした。

ある日、一人で学校から家に歩いて帰りました。

飛ぶのを前提にして街はできているので、とても狭くてデコボコした道を女の子は歩きます

途中、女の子と同じように羽のない、女の子よりも少し小さい男の子がひとりで本を読んでいました。

男の子の顔がよく見えませんでした。

男の子の座っている地面の周りには白い粉がポツポツと落ちていました。

「ひとりでいるの」

「うん」

「ここは夜になるとすごく暗くなるから、早く帰ったほうがいいよ」

「うん」

「お家はどこにあるの?」

「向こう」

女の子記憶では向こうの方には孤児院があって、そこでは同じように羽のない子が住んでいると両親に言っていたのを思い出しました。

もしかして孤児院に住んでいるの?」

「うん」

男の子が顔を上げました。

男の子の顔は鱗のようなもので覆われていました。

酷い皮膚病だったのです。

女の子はきゃあと声を出してしまいました。

白い粉は男の子の皮膚だったのです。

大丈夫だよ うつらないから

女の子一生懸命男の子の顔を見て言いました。

「お友達はいないの?」

「羽がなくても可愛いの子からみんな貰われていったんだよ お姉さんみたいな可愛い顔をしている子から

「顔は治らないの?」

「治るなら今ここになんかいないよ」

「私も羽がないよ 一緒に頑張ろ」

男の子は目を見開いて、女の子の顔を見ました。

男の子女の子の顔を一発殴ると、孤児院とは反対の方向へ走って行ってしました。

女の子は少し怖かったと思いながら家に帰りました。

それから何ヶ月もたちました。

今日女の子誕生日です

友達も招いて誕生日会をしました。

友達は白いクリームケーキに驚いて、喜んでいました。

普段お友達は、黄色クリームケーキを食べているというのです。

その翌朝、女の子は鏡を見ると、額の部分に数枚の鱗が生えているのを見つけました。

急に、女の子は怖くなりました。

自分の顔が、あの男の子の顔のようになってしまったらと思うのでした。

みんなから酷く嫌われる。両親からも捨てられて白いケーキが食べられなくなる。

女の子学校に行かずに、羽がある子たちが遊び場にしている近くの高い建物に登りました。

そこから女の子は飛びました。

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