原発の新規制基準施行から８日で丸２年を迎えた。福井県内原発は関西電力の７基が、新基準に基づく安全審査を原子力規制委員会に申請しているが、事実上の審査合格となったのは高浜原発３、４号機のみ。７日には九州電力川内原発１号（鹿児島県）の燃料装荷作業が始まったが、県内では７基とも再稼働は見通せない状況に変わりはない。運転開始から４０年前後の古い原発３基は、運転延長に向け、審査合格の期限をにらみながら神経質な審議が続いている。７基の審査状況を整理した。
【高浜３、４号機】
一昨年７月の新基準施行日に申請。今年２月に事実上の審査合格となり原子炉設置変更を許可された。審査の進み具合でみると、来月中旬にも再稼働する川内（せんだい）原発に続き、２番目につける。現在は残りの安全審査のうち、設備の詳細設計を示す工事計画の審査を受けている。
工事計画は数万ページと膨大で審査に時間はかかるが「論点ははっきりしており、規制委からの“宿題”の返答も順調。夏の間には認可を受けたい」と関電関係者。だが２基に関しては福井地裁が４月に再稼働差し止めを命じる仮処分を決定。決定が覆らない限り再稼働できない。９〜１０月に予定される異議審の行方がポイントになる。
規制委は「（仮処分決定の）影響は受けない」との認識で、粛々と審査を進める方針。再稼働の地元同意に関しては、西川知事が工事計画や、運転管理上のルールを定めた保安規定の審査を踏まえ判断する考えを示している。
【大飯３、４号機】
高浜３、４号機と同時に申請し、地震・津波対策の審査で“最難関”とされる基準地震動（耐震設計の目安となる地震の揺れ）は昨年１２月に決まった。規制委は「主な課題として残されているものはほぼなくなった」としている。
施設・設備の審査で、大規模な自然災害や大型航空機衝突・テロを想定した大規模損壊対策などを今後詰める予定。その後、関電はこれまでの審査内容を反映した補正書を申請する。これを基に規制委は原子炉設置変更許可の審査書案を作成する流れだが、スケジュールは見通せない。
【高浜１、２号機】
３月に安全審査を申請、４月には運転期間を６０年とする運転延長申請を国内で初めて行った。２基を再稼働するには、規定により来年７月７日までの期限内に安全審査と運転延長の二つの審査に合格する必要がある。
審査で焦点となっているのが、古い原発特有の課題。２基は新基準の火災対策で求める燃えにくいケーブルを使っていない。関電は当初、ケーブルに防火塗料を吹き付ける対応などを示したが、規制委から疑問が出たため防火シートで覆う対策を示した。
基準地震動の問題はクリアしているものの、規制委からは、工事計画の申請遅れが指摘されている。関電は今月、申請したが必要書類は一部にとどまっている。
【美浜３号機】
３月に安全審査を申請した。運転３８年を経過しているため、４０年超えの運転延長申請に必要な「特別点検」に５月から着手。問題がなければ９〜１２月に延長申請する方針だ。来年１１月末までに安全審査と運転延長の二つの審査に合格しなければならない。
基準地震動がまだ決まっておらず、規制委は今月の審査会合で、審査の“時間切れ”を回避するには８月末までに基準地震動を決める必要があるとの見解を示した。
審査では、基準地震動を確定する上で前提となる地震想定をめぐって関電と規制委の意見が対立。関電は「震源断層の上端は深さ４キロ」と主張しているが、規制委はより安全側に立って「深さ３キロ」への見直しを求めている。
関電は「規制委の理解が得られるよう審査の中で丁寧に説明していく」とし、現時点で方針を変えていない。