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 韓国メディアはお祭り騒ぎだ。日本の世界遺産登録と引き換えに、新たな外交的武器を勝ち取ったからだ。

初めて強制労働を認めた

7月5日、明治日本の23の産業革命遺産がユネスコの世界遺産として登録されました。韓国紙は「日本に勝った」と大喜びしているそうですね。

鈴置:韓国政府は、うち7つの施設で朝鮮人労働者が強制労働させられていたと主張、登録に反対しました。結局、朝鮮人労働者に関し日本政府が言及することで両国は妥協、登録が実現したのです。

 韓国各紙が喜んでいるのは「日本の言及ぶり」です。ここで「朝鮮人労働者の強制連行を日本政府に初めて認めさせた」からです。

 中央日報の「日本『韓国人の意に反して強制的に働かせた事実ある』」(7月6日、日本語)は、以下のように韓国政府の成功をうたいました。

  • 尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は登録決定後に会見し「韓国側の正当な憂慮が忠実に反映された」と評価した。外交部の関係者は「事実上、初めて日本政府が国際社会に強制労役を公式的に認めたという点に大きな意味がある」と述べた。
  • 外交部の当局者は「当初の目標は7カ所の施設を遺産登録から除外することで(これは果たせなかった)が、日本が強制徴用を認め、日帝強占期に対する国際社会の認識を高めることができた。この成果がより大きかった」と述べた。

 韓国外交部も同日、ホームページ(韓国語)で日本政府代表が世界遺産委員会での公式発言で「強制して労役」という言葉を使ったことを強調しました。

「強制を意味しない」

岸田文雄外相や菅義偉官房長官は「日本政府代表の発言は強制労働を意味しない」と説明していますが。

鈴置:日韓の間で最後まで揉めたのは、まさにその「表現」でした。不法な強制労働だったと主張する韓国は「forced labour」(強制労働)という言葉を使うべきだとしました。

 一方、朝鮮人の労働は戦時徴用(requisition)という、法に則ったものだったと主張する日本は「forced to work」(働かされた)を使うべきとしました。

 最後は日本の主張する「forced to work」を使うことになりました。そして「働かされた」という日本語訳を念頭に、岸田外相らは「強制労働を意味しない」と主張したのです。

 これに対し、韓国外交部は先ほど紹介したように「forced to work」を「強制して労役」と韓国語に訳し「強制労働だったことを日本に認めさせた」と言っているのです。外交的にはよくある玉虫色の解決です。

 ただ、正本は英語。「forced to work」です。もろに「強制労働」を意味する「forced labour」ほどではないにしろ「強制労働」と受け止められる可能性が高い、と指摘する専門家が多いのです。

 ことに7月5日のユネスコの世界遺産委員会での演説で、日本政府代表の佐藤地(くに)ユネスコ政府代表部大使は「brought against their will and forced to work under harsh conditions」と語りました。

 交渉の過程で韓国側と折り合うために盛り込んだ発言と見られます。これを日本政府は日本語では「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の中で働かされた」と翻訳しています。

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