加速度センサで人間の動きを測ると、共通の特徴が見えてくる——前回わかったのは、そのシンプルな事実でした。
それをふまえて今回は、ぼくらが今まで漠然と感じてきた「あるもの」の実態についてです。 さて、その「あるもの」とは……今回はぼくが一番知りたかったこの部分について、矢野さんに聞いてみたいと思います。
幸福は数字で測れる!
——ぼくが『データの見えざる手』を読んで一番気になった部分をお聞きしていいですか?
矢野和男(以下、矢野) どうぞ。
——この本には「幸せは加速度センサで計れる」と書かれています。これは本当なんでしょうか? そもそもどういうふうに幸せを定量化してるんでしょうか。
矢野 人間のハピネスに関する学問というのは、この一〇年間で急速に進歩しています。そのなかで「ポジティブ心理学」という学問があります。私たちは、ソニア・リュポミルスキ教授という人が考えたハピネス(幸福感)を測るアンケートを使って、心を定量化して研究しています。
——でも、それって自己申告ですよね? アンケート調査というのはそもそも信頼できるんでしょうか。
矢野 一人二人の回答ならともかく、大量のデータとセンサを使って大人数の回答を統計解析したので、かなり信憑性は高いと思います。名刺型のウエアラブルセンサをつけてもらってデータを取ったうえで、ハピネスを測るアンケートを採ったんです。その結果、身体運動の特徴と主観的なハピネスとの間には強い相関関係がありました。
さらに、たとえば毎週「よかったこと」を書くことを続けてもらったメンバーは、ほかの人に比べてハピネスレベルが高まっていたという実験結果も出ています。
——迷信もある部分では正しかったということなのかな……。「ポジティブなことを口にしましょう」とか「今日あった良いことを毎日書いてると幸せがやってきます」とか、昔から言われてるじゃないですか。胡散臭いと思ってたけど、実際にそれをやるとハピネスが上がるというエビデンスが出たわけですよね。
矢野 はい。
——うーん、不思議だ……。どういうメカニズムによってハピネスが上がっているんでしょうか?
矢野 これは別の家庭で育った一卵性双生児を研究することでわかったことですが、実は幸せを感じる能力というのは半分くらい遺伝子の影響で決まってます。
——え! 遺伝子レベルで半分くらいは幸せが決まっているんですか!?
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