TPA法案:米下院可決 関連法案の否決で成立持ち越しに

毎日新聞 2015年06月13日 11時04分(最終更新 06月13日 12時40分)

米議会のTPA法案採決の流れ
米議会のTPA法案採決の流れ

 ◇TPP推進派の共和党 来週にも下院で関連法案の再採決へ

 【ワシントン清水憲司】米議会下院は12日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉合意に不可欠とされる大統領貿易促進権限(TPA)法案を採決し、賛成多数で可決した。ただ、TPA法案の成立に必要な関連法案が否決されたため、TPA法案の成立は持ち越した。

 TPA法案は既に上院で可決され、TPP推進派の共和党は来週にも下院で関連法案の再採決を行い、成立に持ち込みたい構え。オバマ大統領も12日、関連法案の早期可決を求める声明を発表したが、関連法案は大差で否決されており、綱渡りの状況が続きそうだ。

 下院本会議(435議席)で行われたTPA法案の採決結果は、賛成219、反対211だった。共和党から54人が反対に回ったが、TPP反対論の根強い民主党から28人が賛成票を投じ、僅差で可決された。

 しかし、TPPによる貿易自由化で輸入が増え、米国内の雇用が減少する恐れがあることに備える関連法案は、賛成126、反対302と大差で否決された。関連法案は、失業者への職業訓練の実施などが盛り込まれていたが、共和党は「対策が手厚すぎる」と批判。逆に民主党は一段の支援拡充を求め、両党から多数の反対票が投じられた。

 米議会では、上下両院が同じ内容の法案を可決することが成立の条件になる。上院が5月に可決したTPA法案には雇用対策も含まれていたが、下院はTPA法案から雇用対策を分離して関連法案として審議したため、両法案を可決することが必要だった。

 下院では、上院と同様に雇用対策も含んだTPA法案を採決した場合、雇用対策に批判的な共和党からTPA法案そのものへの反対票も多く出る可能性があったため、TPA法案から雇用対策を分離し、関連法案として審議した。しかし、関連法案に多くが賛成するとみられていた民主党の大勢が「TPP阻止」を目指し、想定以上に関連法案に反対票を投じる結果になった。

 ◇大統領貿易促進権限(TPA)法案

 米国は、日本などと異なって、通商交渉の権限が議会にあり、この権限を大統領に一任すると定める法案。成立すると、議会は政府間で合意した内容を修正できなくなり、賛否のみ判断する。合意内容が議会に修正される可能性があるうちは、他国の政府も交渉を進めにくいため、法案成立が交渉合意に不可欠とされている。TPAはTrade Promotion Authorityの略。

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