石炭産業:日本が最大支援 環境NGO、切り替えを
毎日新聞 2015年07月08日 11時45分
化石燃料の中で最も二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力発電所を途上国などが新設する際、最大の支援国が日本になっているとの報告書を、国際環境NGOがまとめた。石炭産業への公的資金の拠出額は最近8年間で計204億ドル(約2兆円)に上り、NGOは「地球温暖化防止のため、支援を石炭ではなく再生可能エネルギーの普及に切り替えるべきだ」と訴える。
調査はWWF(世界自然保護基金)欧州政策オフィスなど3団体が実施。先進国を中心に20カ国の統計資料やアンケートを基に、2007〜14年の石炭火発や炭鉱開発などへの公的支援額を調べた。
その結果、8年間で20カ国から拠出されたのは730億ドル(約8兆円)。国別では(1)日本(204億ドル)(2)中国(148億ドル)(3)韓国(73億ドル)(4)ドイツ(69億ドル)(5)米国(44億ドル)−−の順で、全体の77%が石炭火力発電所関連だった。
日本は、主に国際協力銀行(JBIC)を通じ、ベトナムやフィリピンなど少なくとも15カ国に約60件の石炭火発の新設支援などを実施。世界全体では支援額が09年以降減る傾向にあるが、日本からは増えていた。外務省関係者は「石炭は燃料コストが低く、導入を希望する途上国は多い。高効率の日本の技術を使えばCO2排出が少なくて済む」と説明する。
これに対し、WWFジャパンの山岸尚之さんは「高効率でも、石炭火力発電からのCO2排出は多く、稼働すれば数十年間も続く」と、再生エネの導入促進を求めている。【渡辺諒】