こんにちは、谷口マサトです。
ワインを好きな方は多いと思いますが、ぶどう畑を見に行きたいと思ったことはありますか? 様々な人をもてなすこの連載ですが、今回はワイン造りを知りたい方をもてなします。
国産ぶどうを使った日本ワインのクオリティの高さが近年注目されていますが、「旅先」としても、国内でワインを造っている人から日本語で話を聞けるので楽しいものです。
そこで今回は、国産ワインの元祖・山梨県の勝沼にある「勝沼醸造」にお邪魔してきました。日本のみならず海外での受賞も多い実力派。そして日本固有のぶどう品種「甲州」にこだわり世界に通ずるワイン造りをしています。
「それ何が珍しいの?国産ワインなら普通では?」と思う人も多い……というか私もそうだったんですが、その実態は全然違っていて、国産ワインの多くは原料を海外から輸入して醸造しているモノだったんですね……。
そして世界には10,000ものぶどうの種類があるのですが、なぜ甲州ぶどうにこだわるのか? それは記事の後半で紹介するとして、まずは「勝沼ぶどう郷」駅から旅は始まりました。
東京から勝沼へ
勝沼の何が良いって東京から近いこと!新宿から「あずさ7号」に乗れば、2,000円もかからずに1時間半で着いちゃう手軽さ。気軽に行けるワイナリーとしては抜群の場所だ。
そして今回もてなすのは、ワイン好きのミクさんだ。
駅の近くには見晴らしのよい「ぶどうの丘」があり、こんな風に広大な風景が広がる。
そして駅からタクシーで10分もかからない場所にある「勝沼醸造」に向かう。
「勝沼醸造」のエントランスを入ると、ワインの樽がこのように並んでいる。
今回は「ワイナリーツアー」に申し込んだ。約2時間、専門スタッフかオーナー自ら、ぶどう畑やワインセラーを案内してくれる。そして6種類のワインをテイスティングできるのだ。※テイスティングだけのコースもある。
2階に上がると……
ワイングラスの名門ブランド、RIEDEL(リーデル)製のワイングラスのギャラリーがある。そしてこのスペースでワインについて様々な話を聞いたあと、ぶどう畑に向かう。
まだ青いぶどうがぶらさがっている。
ワイナリーツアーを案内してくれた有賀弘和さん。「勝沼醸造」の常務取締役だ。国産ワインの現状とこれまでの取り組みについて熱く語ってくれた。
「糖度を高めるために、ぶどう1本の樹に成らせる実を制限してカットしています。カットしすぎて量が作れず困った時もあったんですが、スタッフから『うちの会社の理念は“たとえ一樽でも最高のもの”でしょう?何が問題なんですか』と言われて言い返せなかったですね(笑)。
様々な技術や品種を試してきましたが、特に国産品種の『甲州』で世界に通じるワインを造るのが夢で今までやってきました。ワインはその土地の風土が特徴になりますが、『甲州』は日本にしかないので特徴的なワインができます。
その結果、ワインとの相性が難しいと言われていた和食にも合いますし、世界から見てもオンリーワンの存在なので強いですね。JALとANAの国際線のファーストクラスでも採用されています」
ぶどう畑のあとは、本日の目玉の一つ、テイスティングの時間だ。
ちなみにこちらはミクさんのお母さんのリカさん。今さらだが最初から一緒だ。
「お母さんも行きたいって」とミクさんに言われて三人旅となった。今回のワイナリーも、最近白ワインにはまっているリカさんに教えてもらった。
リカさんは関西で長く暮らしていたせいか、とてもお笑いが好きな方だ。例えばワインを飲んだ時「樽で熟成させた『勝沼 甲州樽醗酵』が美味しかったけど、人が歳をとる時もこうありたいものね。私もキレイな熟成肉になってみたいわ」と言う。
リカさんはどこまで冗談で言っているのか分からない時がある。
さて、テイスティングでは同じ甲州種から造られた特徴が違う6種類のワインを楽しめる。
面白いのは、栽培地(テロワール)毎によって味わいの違うワインができること。
例えばこの「御坂」とは地名のことで、山梨県笛吹市御坂町で栽培された甲州種を100%使用している。ここの土は石ころだらけの砂壤土でワインに特に適しているそうだ。
同じ甲州でも、場所やそのワインをいつ醸造したかというヴィンテージ、そしてどのような樽で熟成されたかによって味が大きく異なる。それらを丁寧に説明してもらった上で飲み比べられるので楽しい。
さて、テイスティングの後は、「勝沼醸造」直営のレストラン「風」。
その土地のワインと食べ物を一緒に楽しめるのがワイナリーの醍醐味だ。
長崎の大浦天主堂をイメージした、天井が高い素敵な雰囲気のレストランだ。
こちらは「甲州地鶏と鴨とキノコの炊き込みご飯」。放し飼いでゆっくりと育てられた「甲州地鶏」を甲州で作られたワインで楽しめる。
ぐは!
ウメえええええ!
こちらは本日の魚料理。
ローストビーフは黒毛和牛を目の前で切ってくれる。
そして…
レストランのあとは「大善寺」へ。「ぶどう寺」とも呼ばれるこの寺で、僧侶の行基がぶどう作りを民衆に広め、甲州葡萄が始まったと言われている。つまり先ほどのワイナリーも元をたどればここから始まっているのだ。
なんと住職もワインを作っており、ワインを飲みながら拝観もできる。
もはやなんでもありだ。すごいぞ勝沼。
高い石段を登ると……
見晴らしの良い景色が広がる。
フゥ…
歩き疲れた様子のミクさん。
疲れたのと、夕方に東京で用事があるそうでミクさんは先に帰っていった。
「お母さんよろしくね!」ということで後はリカさんと旅を続けた。
繰り返すが、関西で生活していた時期が長いリカさんはお笑いが好きだ。どこまでお笑いで言っているのかよくわからない時がある。本人いわく、ほとんどボケで言っているのだが関東だとツッコンでくれないだけなのだという。
そしてちょうどこの時もそうだった。
「若いワインもいいけれど、年月を重ねたコクのあるワインも良いものよ。
今度はヴィンテージワインのテイスティングはいかが?」
リカさん……
どうツッコメばいいんだ。
今回ご紹介した店
・勝沼醸造
色々な人を“もてなす”店を紹介するこの連載。
面白いレストランがあれば教えてください。
全国に取材に伺います。
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【第三話】“サードウェーブ女子”を三軒茶屋でもてなす、産地にこだわりすぎる激旨ビストロ
【第二話】“ヒツジ系肉食女子”をもてなす、極上のラムチョップを“焼き鳥感覚”で食べられる店
【第一話】“北陸女子”を上質にもてなす、日本産ワインの図書館レストラン
著者:谷口マサト
Webライター&プロデューサー
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