不作為に募る不信感 鎌倉の歴史的建造物、市が解体計画

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 世界遺産を目指したこともある古都鎌倉市で、歴史的な建造物の解体計画が相次いで浮上している。市立御成小学校の敷地内に隣り合う旧講堂と旧鎌倉町立図書館、そしてJR北鎌倉駅脇の素掘りのトンネル。3件の所有者である市は老朽化を挙げるが、鎌倉に溶け込んだこれらの点景を愛する市民は、行政の消極性に暗然としている。地域の景観や風情に対する理解も愛情もないのか、と-。

20年近くも放置

 「そんなことが許されていいのか」。松尾崇市長が6月12日の市議会で「撤去も含め夏休み前までに方針を決定する」と発言したのを聞き、かつて保存活動に関わった一人は驚きの声を上げた。「残すことに決まっていたではないか」

 そう、決まっていたはずだった。市は1996年、御成小の校舎改築計画に関する報告書に、講堂を「そのまま修復保存して利用する」と明記。98年には保存を前提にした詳細調査を実施し、補強や修復の工事の細目まで定めていた。

 以来17年。同校の改築計画に携わり、現在は講堂の「保存活用をめざす会」の幹事を務める市内の建築家、福澤健次さんは「市が何もしない間に建物の劣化が進んだ」と悔やむ。

 そもそも御成小の校舎改築に至る間には、30年以上前から保存や改築の方法、さらに埋蔵文化財の扱いなどをめぐって市やPTAなどが激論を交わした経緯がある。講堂を残し伝えることは、その産物だった。

 「市民が議論に費やした時間を無駄にしてはならない」と別の専門家も、放置の末に撤去案を持ち出した市に不信感を募らせる。市学校施設課は「財政上の問題で修復費用が予算化できなかった」と説明する。...

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