【7月8日 AFP】世界各地の岩礁400か所に設置した餌付きの水中カメラを用い、世界中に生息するサメの個体数を計測する史上初の試みが始まっている。米豪などの国際研究チームが7日、発表した。

「グローバル・フィンプリント(Global FinPrint)」と呼ばれるこの国際調査プロジェクトは、ストーニーブルック大(Stony Brook University)のデミアン・チャップマン(Demian Chapman)氏が主導し、豪ジェームズクック大学(James Cook University)やオーストラリア海洋科学研究所(Australian Institute of Marine ScienceAIMS)の研究者らが参加している。

 プロジェクトの目的は、サメの個体群が健全なのはどこか、どこが苦境に陥っているか、サンゴ礁の健全性にサメがどのような影響を及ぼすかなどの状況を2018年までに明確に把握することだ。

 米フロリダ国際大学(Florida International University)のサメ研究の第一人者で、海洋生物学者のマイク・ハイトハウス(Mike Heithaus)氏は「皆はこのことに気付いていないかもしれないが、人間にはサメが必要なのだ」と話す。

 ハイトハウス氏によると、サメは海の最上位捕食者として、食物連鎖で重要な役割を担っている。増えすぎると海草を食い荒らしてしまう恐れがあるウミガメや海牛を捕食して個体数を抑制することで、海中の自然のバランスを制御する助けになっている。この海草は、人間が食用にする小型の魚やエビの重要な生息場所なのだという。

 だが、サメは世界の一部地域で苦境に陥っている。フカヒレや肉のために捕獲され、毎年1億匹ものサメが海から消えていると同氏は指摘する。

 グローバル・フィンプリント・プロジェクトは、米マイクロソフト(Microsoft)の共同創業者のポール・G・アレン(Paul G. Allen)氏が創設した投資会社のバルカン(Vulcan Inc)から、400万ドル(約4億9000万円)の投資を受けている。同社は、海の健全性、宇宙飛行、人間の脳の理解などに関する一連の科学プロジェクトに対して資金提供を行っている。

 バルカンの慈善活動部門を統括するデューン・アイブス(Dune Ives)氏は「国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)の最近の報告書には、サメ・エイ種の全体の半数近くについて、個体数の実態を正確に見極めるために必要なデータが存在しないことが示されていた。このような情報を提供することで、保護の取り組みの効果がさらに高まるに違いない」と話す。

 種の密度、生息環境、多様性の傾向に関する情報を含む調査データは、今後数年以内にオープンアクセスのプラットフォームから入手可能になる見込みだ。

 チャップマン氏は「グローバル・フィンプリントは、壊れやすい海洋生態系で、サメが排除されると何が起きるかという、海の重大な謎の一つに関する理解を深める助けになるに違いない」と話し、「これは極めて重要な問題だ。多くの国々が食糧安全確保、観光、海岸保全などに関して健全なサンゴ礁に依存している」と指摘した。(c)AFP/Kerry SHERIDAN