トヨタと離別やむを得ない、新しい恋人はグーグルのシステム
2015/07/08 06:00 JST
(ブルームバーグ):技術コンサルタントのジェフ・カーペンター氏(43)の生活にはグーグル が深く入り込んでいる。アンドロイドのスマートフォンと日々の生活を共にし、行動パターンも予測してくれる。
愛車のトヨタ自動車 「カムリ」ではその機能が使えない。20代のころからトヨタ車を乗り継いできたカーペンター氏だが、今、別ブランドに乗り換えるべきか悩んでいる。
「グーグルのシステムは私のことを分かっている」と米アイオワ州在住のカーペンター氏は話した。グーグルはスマホと自動車の車載器を連携する「アンドロイド・オート」を昨年6月に発表しており、このシステムが自動車を選ぶ最優先条件になり得るという。
カーペンター氏のような購買行動の変化は、若年層を中心に広がりつつある。常にスマホとつながっていたい若者にとって、大事なのは車の馬力や社会的なブランド価値ではなく、その車でスマホと変わらない操作ができる画面があるかということだ。
調査会社IHSオートモーティブのアナリスト、マーク・ボヤジス氏は、米フォード・モーターも独BMWもそれぞれ車の特徴はあるが、顧客の比較対象は自動車のブランドではなく、グーグルのアンドロイド・オートか、それとも米アップル の提供する車載用システム「カー・プレイ」のどちらを搭載している車かという点だと述べた。
自動車メーカーは難しい判断を迫られている。グーグルやアップルのシステムを搭載していないと、カーペンター氏のような顧客を失うリスクがある。しかし、グーグルやアップルに車載システムとの接続を許してしまうと、さらに大きなリスクにつながる可能性もある。グーグルは自動運転技術の開発を進めており、アップルは自動車産業への参入を模索している。
分かれる対応グーグルやアップルのシステムが市場に出始めてからも、自動車業界の対応は分かれている。米ゼネラル・モーターズ(GM )のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は、シボレーやキャデラックにグーグルやアップルのシステムを装備するのは顧客の要望だと話した。「搭載器を使うのは顧客である、という考えで全員一致した」とバーラ氏は5月にソーシャル・ネットワーク・サービスのリンクトインの投稿メッセージに書いた。
韓国の現代自動車 はこの分野で先頭を走ることにこだわった。今年5月、2015年型「ソナタ」がグーグルのシステムを利用可能な米国で最初のモデルとなった。同社の情報ネットワーク関連技術の幹部であるケイソン・グローバー氏は、今が変化に向けて対応すべき時だと述べた。
一方、トヨタの姿勢は慎重だ。顧客情報の保護の問題のほか、ドライバーの注意力が散漫にならないかなどを検証している。同社のBRコネクティッド戦略企画室の村田賢一室長は「顧客に安全に使ってもらえるレベルとして満足できるものがまだない」と述べた。
トヨタは今年6月、フォードの子会社が開発した「スマートデバイスリンク」(SDL)を、トヨタとレクサスの車両に導入するための検討に入ると発表した。SDLの利用で、車載ディスプレイを通じて車内でスマホアプリを操作したり、道路情報などを利用できるという。
村田氏はトヨタとして安全が担保できる画面表示を準備することを検討しており、「それぞれのメーカーが独自の画面表示を用意できることに魅力を感じている」と述べた。その上で、「顧客の安全が確認できるまではこうした技術は提供できないだろう」という考えを示した。
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更新日時: 2015/07/08 06:00 JST