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 来春に卒業する大学生らの就職活動が本格化している。例年なら、春に大手企業が選考を終え、中小企業の採用に移る時期だが、今年は勝手が違う。就職・採用活動が「後ろ倒し」となり、大手の選考ピークが夏に移ったからだ。いま採用を決めても大手に流れる可能性もあり、中小は人材確保を心配する。

 大阪府中小企業家同友会が12日、大阪市内で開いた合同企業説明会。37社がブースをもうけ、会社紹介の動画を流したり、パネルを使ったりして、社長らが学生たちに直接、説明していた。

 計測システムの設計・製造などをする中央電機計器製作所(大阪市都島区)の畑野淳一社長は「ものづくりを支えている中小の自信と誇りをアピールし、採用につなげていきたい」と力を込める。

 これまでの就活では、すでに終わっている大手の選考に漏れた学生たちが回ってくることもあり、中小が採用に取りかかるのが、この時期だった。

 今年は中小にとって今が採用活動の勝負どころだ。「学業に影響が出ないように」という理由で、会社説明会の開始時期を12月から3月に、選考開始を4月から8月に遅らせるよう、経団連が企業に求めているからだ。説明会に参加していた中小企業の社長は「今年は大企業の選考が後に控えていて、学生が流れていかないか心配だ」と話した。

 就活の時期が変わり、学生たちも不安や戸惑いを感じている。

 大阪産業大学の4年生、金田孝平さん(21)は「今年は『短期決戦』という言われ方もしているが、そんなことはない」。すでに大手企業から内々定をもらった友人もいるが、就活を続けているという。龍谷大学4年生の望月暢(いたる)さん(21)も「内々定が出ても、もっと大きな企業に入りたいと就活をしている友達がいる」と話す。

 就職情報会社ディスコの調査では、6月1日時点の内定率は35・1%にのぼる。そのうち7割超が就職活動を継続し、内定企業よりも大きい就職先を探す学生が多いという。

 8月からの選考を控える大企業側にも不安がある。

 パナソニックは「短期間で複数の内定をもらう学生が、どの程度辞退するのか想定するのが難しく、それを補う採用活動の実施期間が相当に短くなる」(広報担当者)。

 大企業を中心に採用者数を増やし、今年の就活は「売り手市場」とも言われる。だが、大手と中小の採用時期が入れ替わったことで、「大企業を中心に考えている学生が、秋になっても内定企業がないという不幸な目に遭う可能性がある」とみる企業経営者も少なくない。(近藤郷平、山村哲史)