<ギリシャ>「この国はもう手詰まり」アテネ市民ため息
毎日新聞 7月7日(火)21時19分配信
【アテネ宮川裕章】ギリシャ政府とEUとの金融支援を巡る交渉が続く中、ギリシャの銀行の資金は底をつきつつある。ギリシャ銀行協会は、当初7日に予定していた窓口再開を8日以降に延期し、1人1日60ユーロ(約8000円)までの引き出し制限を継続した。暴動や略奪など社会不安は伝えられていないが、市民には現金の引き出し停止など「明日」以降を不安視する声が広がった。
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アテネ市内では7日午前も、シャッターを閉じた銀行外の現金自動受払機(ATM)の前に長い行列ができた。中心部シンダグマ広場そばのATM前に並ぶ公務員のベリカ・カプタニさん(57)は生活費のため、連日60ユーロの引き出しに通っている。「窓口の業務再開は最初から期待していないし、欧州中央銀行(ECB)からの資金供給がなければ、銀行の資金不足の状況に変わりはない」と冷静だ。「政府の交渉には期待したいが、何が起こるか分からない。将来を全く見通せない不安が一番つらい」と話した。一方で、年金生活者の不安はより深刻で、アテネなどの銀行前では高齢者たちが年金の支給を待って集まり、整理券が配られると殺到する場面もあった。
商店の資金繰りはインターネット決済などで何とか持ちこたえている状況だ。ガソリンスタンドを経営するクリストス・リバノスさん(56)は「客足は(前回債務危機の)5年前から年々減っている。カードで支払う人が多いが、現金を動かさずにすむネット決済で何とかしのいでいる。でもこの先どうなるか分からない」。喫茶店を経営するベリカ・カプタニさん(57)は「国民投票の結果は、もう大勢に影響しない。今続く交渉も、どう転んでも同じこと。緊縮策受け入れも、ユーロ圏離脱も、悲惨な結果になるだろう。この国は、もう手詰まりだと思う」と悲観した。
交渉の行く末は、若者たちの未来に暗い影を落としそうだ。ATM前に並んでいた大学生のビアンカ・フィートロスさん(24)は「チプラス首相はEUとの交渉を有利にするために緊縮策への反対を呼びかけたが、私は反対派の勝利でギリシャはユーロ圏を離脱することになると思う」と心配顔だ。「子供のころからの夢で、ユーロ圏の国の大学院に進学したいが、ドラクマ(ギリシャ旧通貨)に戻って通貨が暴落すれば、それも無理になるかもしれない。なんとか交渉を続けて、良い結果になってほしい」と交渉の進展に望みを託した。
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