プレイヤーとマネージャーの役割を切り離すのは時代遅れ

齋藤先生プレイヤーとマネージャーの役割を切り離すのは時代遅れ」

若手リーダーが抱える悩みを、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー 実行委員長の齋藤孝先生がズバッと解決! 全5回、1回1質問で具体的な解決策やそれに基づく理論なども交えます。第1回は「仕事の住み分け」についてです。

相談「プレイヤーとマネジメント、どちらも中途半端です……」

プレイヤーか、マネージャーか──。この役割は完全に分かれる時代でもないと思っています。その人がチーム内で任される役割によって、誰もがマネージャーにもプレイヤーにもなり得るわけです。

チームのメンバー構成が「上司一人とその他のメンバー」というものだけではなくなってきているとも思います。マネージャーとプレイヤーの両方の役割を “水陸両用”でやっていただくイメージを持つといいと思います。

「マネージャーだけやる」の落とし穴

「マネジメントを学びました」と言う人が、その“技術だけ”を学んでいるのを見ると「何か違うな」と思います。実際にプレイヤーとして動いた経験が無いと、実情も何も分かりません。経営でも「実際に経営をしたら経営学で学んだことと勝手が違った」というのはよくあることです。

あらゆるチームでは今、技術・実践面を含め、「プレイヤー」→「マネージャー」→「プレイヤー」というように、役割をローテーションしていくことが求められているのではないでしょうか。それが企業の活性化にもつながると思います。

たとえば私のチームでは、担当者が経験を積んでいくと主任やマネージャーになります。ここまでは一般的ですが、マネージャーの役割に期限を設けて、それが終わるとプレイヤーに戻るという構造になっています

“役職を上っていくだけ。上り詰めたら終わり “ではなく、主任をやったらまた元のプレイヤーに戻るといった順繰り構造もよいと思っています。年齢や経験に関係なく、役割をどんどん回していくのです。

そのうちに各人の経験値が増え、得意分野がはっきりしてきます。チーム全体でコストパフォーマンスをどう上げるかという視点で「あなたは幹事役がうまいから、もう少し長くマネジメントを担当してほしい」といった話もしやすくなります。結果的に上手な役割の住み分けができるこの流れがいいと思いますね。

「自発的な住み分けの有無」がチームの明暗を分ける

“住み分け”を考えることは、とても大事です。チーム全体がうまく回るエネルギーの配分があって、それは仕事の効率のよさに直結します。

「書類作成」を例に取ってみましょう。もしあなたが書類作成は苦手で、チームに得意な人がいる場合、人との交渉は自分が担当し、書類作成は別の人にお願いしますよね。チーム内でいいコンビを作るのは良い進め方です。

マネージャーが不在で、プレイヤーの役割の人が中心になったチームもあります。「命令、統括して仕事を進める」だけが正しいやり方ではありません。むしろ、仕事の流れがよくなるコンビやトリオをチーム内で作っておくと、仕事は段々楽になってきます。

自分と違う長所を持つメンバーが集まれば、「ここは自分が担当するから、そちらの仕事はよろしく」という具合に、話が早く、仕事もスムーズに進みます。

仕事をする上で重要な要素はスピード感。何か滞っていると感じた時は、自分自身がブレーキになってスピードが落ちていないかを考えてみましょう

「自分がプレイヤーとマネージャーのどちらに向いているか」ではなく、チームの中で「自分がどう動けば、仕事を効率よくできるか」を考えてみるといいでしょう


「齋藤孝先生のお悩み相談室:記事予定」


・プレイヤーとマネージャーの役割を切り離すのは時代遅れ(7月8日)
・マネジメントは調整ではない。コスパ重視のゲームと考える(7月15日)
・あなたに「カリスマ的なリーダーシップ」は必要ない(7月22日)
・「偉大なるマンネリ」を感じるチームほど最高である(7月29日)
・「過去の成功体験にとらわれるのは古い」という若い人の思い込み(8月5日)

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