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 服のわきの下にできる「汗染み」を防ぐため、汗を出す「汗腺」にふたをして汗が出ないようにする制汗剤の改良が進み、幅広い年代の女性から人気を集めている。開発のきっかけになったのは、NHKの朝の生放送番組での「わき汗論争」だった。

 制汗剤は、薬剤をわきの下に塗ることで汗腺の出口をふさぐなどして、汗を出にくくするものだ。ただ、従来品は、わきが服にこすれたり、肌が伸び縮みしたりした時に薬剤が取れやすく、効果が長続きしにくかった。

 ライオンが昨年発売した「Ban汗ブロックロールオン」は、ヘアスプレーなどに使われているポリマーを混ぜたことで塗った薬剤がコルク栓のように固まり、取れにくい。汗を止める効果が長続きするようになり、日常的に動いても日中は効果が続くという。

 買っているのは主に、服のわきの部分に汗染みが出来るのを嫌がる女性たちだ。制汗剤は年100万個が売れれば成功とされるなかで、発売から1年4カ月で500万個売れた。ライオンのBanのブランドマネジャー、大古勝朗さんは「40代以上を含め、幅広い年齢層の方に買っていただいて驚いた」と話す。

 開発のきっかけは2011年、NHKの情報番組「あさイチ」での「わき汗論争」だ。有働由美子アナウンサーが着る水色のブラウスのわきに汗がにじみ、視聴者が「見苦しい」と指摘。有働アナが番組内で謝罪したところ、「仕方ない」「私も悩んでいる」などの反応が相次ぎ、ネットでも話題になった。

 そこでライオンが女性らから話を聞いたところ、「デートで恥ずかしい思いをした」「集合写真で自分だけわき汗が写った」などの失敗談を持つ人が多いことがわかり、関心が高いとみて商品化を決めたという。

 各社の新商品投入も相次ぐ。今年2月にはニベア花王が同様の効果を持つ「8×4(エイトフォー)ワキ汗EX クリームカプセル」を発売。制汗成分の濃度を高め、「特別に緊張する日の汗も抑える」という。ロート製薬も2月、おもに若い年代向けの「リフレア 汗シールド」シリーズを売り出した。

 薬剤で汗をふさぐことで健康上の心配は無いのだろうか。各社によると、汗腺をふさぐ薬は汗をかきすぎる多汗症の治療で広く使われているという。東京医科歯科大の横関博雄教授(皮膚科)は「汗腺から出られなかった汗は皮膚の角層などに吸収されるので、影響はない」とする。肌の弱い人などは薬剤の刺激でかぶれる可能性もあり、各社は注意しながら使うよう呼びかけている。(村井七緒子)