VDT作業と労災認定

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先日、VDT作業についてのガイドラインを掲載しました。
今回はVDT作業と労災の関係について説明したいと思います。
※VDT作業:パソコンを使った作業

個人的には疲れるとすぐものもらいができ、とても仕事になりません。その場合、労災の休業補償があってもよさそうなものですがたぶん無理だろうなあ、などと思いながら上司に腫れたまぶたの写真を送ったことがあります。こちらとしてはそれを見て、休みなさいと言ってもらえるだろうと思っていたのですが、休みにならなかったことが。休業補償どころではなかった。

 

VDT作業に関連する労災として考えられるものは2種類あります。1つが眼精疲労、もう1つが腱鞘炎などの上肢障害です。

◆眼精疲労
分かりやすく行ってしまうと、眼の疲れですが、もちろんそれだけで労災が認定されるわけではありません。

厚生労働省による定義では
「眼を連続的に使う仕事をするとき、健常者では疲れない程度の仕事でも疲れやすく、前額部の圧迫感、頭痛、眼痛、かすみ、羞明、充血、流涙などが生じて、仕事を継続し得ない状態を言う。」
「言い換えれば、視作業量に比べて以上に強い眼疲労を訴える状態」
とのこと。

作業を少ししただけでも、とにかくひどい疲れ、重さ、痛み、かすみ、はきけ、不快感で、作業を継続することが難しいと言う場合に該当します。

こういった眼の疲労感は、本人の心的な状況が大きく影響する、感じ方に個人差が大きい、遺伝など内因的要素もある、日常生活も影響するなどの問題があります。

その点について厚生労働省では
ある程度本人の申告をもとに、「業務以外の要因が基礎にあっても、業務がその要因に著しい影響を与え、疾病を発生させたと認められる場合には、業務がその疾病の発症にあたって有力な原因であると判断され、業務起因性が認められることとなる。」

「眼精疲労を発生した労働者に視器因子、内環境因子が存在していても、その程度が通常の眼への負荷では、眼精疲労を発症させない程度であったことが医学的に認められ、さらに、外環境因子、すなわち、きわめて悪い作業環境、作業条件化のVDT作業もしくは長時間にわたるVDT作業が、視器因子、内環境因子に著しい影響を及ぼしたと判断される場合には、その眼精疲労について(中略)業務起因性が認められることとなり業務上疾病として取り扱われることとなる」
との見解を示しています。

つまり、本人にある程度要因があったとしても、劣悪な作業環境下で業務を行っていた場合は、労災認定される可能性が高いと言うことになります。

まとめると、個人的な要因が幾分あるにせよ、それを超える劣悪な、ガイドラインも無視した作業環境下で働いたことにより、作業を少ししただけでも、とにかくひどい疲れ、重さ、痛み、かすみ、はきけ、不快感で、作業を継続することが難しいと言う場合に該当します。

ガイドラインを守った就業環境を整備する必要がありそうです。

◆上肢障害
長時間にわたり上半身の緊張が継続すると、頸、肩、腕、手首などに局所的だるさや痛みが発生、これが慢性的になると上肢障害に発展する場合があります。代表的なものとしては、上腕骨外(内)上顆炎、肘部管症候群、手関節炎、腱鞘炎などがあります。

これらは業務上疾病の範囲を定めた別表第1の2第3号の4の「せん孔、印書、電話交換又は速記の業務、金銭登録機を使用する業務、引金つき工具を使用する業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による手指の痙攣、手指、前腕等の腱、腱鞘もしくは腱周囲の炎症又は頸肩腕症候群」に該当する可能性があります。

もともと業務上の疾病については客観的に因果関係を証明することが非常に困難な場合もあります。そこで、一定の業務そしてそれによって生じる可能性が高い疾病については、別表として定め、それに該当した場合は原則業務上の疾病として扱うことになっています。
上肢障害はそのうちの1つとして定められています。

あとは、実際の事例が、この別表に該当するかどうかを確認することになりますが、厚生労働省より「基発第65号上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準」というものが出されていますので、それを参照しながら判断することになります。

・認定要件
(1)上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したものであること。
(2)発症前に過重な業務に就労したこと。
(3)過重な業務への就労と発症までの経過が、医学上妥当なものと認められること。

・上肢等に負担のかかる作業
(1)上肢の反復動作の多い作業
(2)上肢を上げた状態で行う作業
(3)頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
(4)上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
※VDT作業は(1)上肢の反復動作の多い作業に含まれます。

・相当期間
1週間とか10日間という極めて短期的なものではなく、原則として6か月程度以上をいう。

・過重な業務
上肢等に負担のかかる作業を主とする業務において、医学経験則上、上肢障害の発症の有力な原因と認められる業務量を有するものであって、原則として次の(1)又は(2)に該当するものをいう。
(1)同一事業場における同種の労働者と比較して、おおむね10%以上業務量が増加し、その状態が発症直前3か月程度にわたる場合
(2)業務量が一定せず、例えば次のイ又は口に該当するような状態が発症直前3か月程度継続している場合

イ 業務量が1か月の平均では通常の範囲内であっても、1日の業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの
ロ 業務量が1日の平均では通常の範囲内であっても、1日の労働時間の3分の1程度にわたって業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの

(1)「過重な業務」の判断に当たっては、発症前の業務量に着目して記の第2の3の要件を示したが、業務量の面から過重な業務とは直ちに判断できない場合であっても、通常業務による負荷を超える一定の負荷が認められ、次のイからホに掲げた要因が顕著に認められる場合には、それらの要因も総合して評価すること。

イ 長時間作業、連続作業
ロ 他律かつ過度な作業ペース
ハ 過大な重量負荷、力の発揮
二 過度の緊張
ホ 不適切な作業環境

(2)記の第2の3の(1)の「同種の労働者」とは、同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者をいうものであろこと。

上肢障害の発症までの作業従事期間については、原則として6か月程度以上としたが、腱鞘炎等については、作業従事期間が6か月程度に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に過度の負担がかかった場合には、発症することがあるので留意すること。

一般に上肢障害は、業務から離れ、あるいは業務から離れないまでも適切な作業の指導・改善等を行い就業すれば、症状は軽快する。

また、適切な療養を行うことによっておおむね3か月程度で症状が軽快すると考えられ、手術が施行された場合でも一般的におおむね6か月程度の療養が行われれば治ゆするものと考えられるので留意すること。
(つまり休業補償はもらえても3か月、手術した場合でも6カ月までとなります)

http://labor.tank.jp/hoken/keiwan.html

◆別表第一の二 (第三十五条関係)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22F03601000023.html

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