為井記者
「上海中心部の広場です。
週末になると大勢の人が集まって、株取引でどうすれば利益を上げられるのか議論を行っています。」
「今が底値だよ、底値なんだ。
こうやって…こうやって上がっていくんだよ。」
「もう売っちゃったの?」
「売ったよ!」
「だめだよ!」
「だって下がると思ったんだよ!」
「月曜日に絶対また上がるって言っただろ。」
証券会社の建物の近くにあるこの広場。
個人投資家でいつも賑わっています。
人だかりができているその先をのぞいてみると…。
「黄色の線になったら買い、白の線は売り。
こんなに簡単、1分でマスターできる。」
株価の“予想ソフト”を自作し、売り出す人の姿がありました。
手作りの看板には、“儲かることを保証します”の文字が。
「気分で決めて、買い直せばいいんだ。」
中国では、株式売買高に占める個人投資家の割合は8割に上り、株式市場の主役です。
人々の間で株取引は急速に広がり、今年1月から3月までに新たに開設された証券会社の口座数は、およそ800万。
去年(2014年)の同じ時期の5倍を超えました。
上海の証券会社です。
新たに口座を開設する人の中には、初めて株取り引きを行う若者の姿が目立ちます。
口座開設に訪れた若者
「友達とは遊ぶ話ばかりだったが、最近は株の話ばかりになった。」
手持ちの資金を運用して、少しでも資産を増やそうとする意欲が旺盛な中国の人々。
株式市場に資金が流れ込む背景の1つに、不動産市場の低迷があります。
2008年、リーマンショック直後の政府による景気刺激策を受けて、中国の不動産市場には大量の資金が流れこみました。
しかし、供給が過剰になり、多くの都市で大量に売れ残りが発生。
この1年は、主要都市のほとんどで新築住宅の価格が下落し、上海でも5%余り下落しました。
その結果、新たな投資先を求めて資金は株式市場に流入し、株価上昇を招いているのです。
会社員の沈トウさんです。
不動産への投資を検討していましたが、価格の低迷を実感し、株への投資を始めました。
家族3人を養うためにも将来に備えて手元の資金を少しでも増やしたい沈さん。
日本円でおよそ400万円から投資を始めたところ、購入した銘柄は3か月で株価がおよそ7割上昇。
いまでは資産のほとんどにあたる1,000万円ほどをつぎ込んでいます。
会社員 沈トウさん
「買ったときはここで、今はここ。
70〜80%上がりました。
いま株が勢いにのっているので始めた。
株でもうける自信がある。」
過熱する一方の個人投資。
自己資金以上の金額を株につぎ込む人もいます。
この会社では、株取引の客専門に資金を貸し出すサービスを去年から始めています。
高い利息をとって保証金の最大4倍まで貸し出します。
見通しが外れて株価が下がれば損失も大きくなりますが、少ない元手でより大きな利益が狙えるため、客の数は伸びる一方だといいます。
インターネット金融仲介会社CEO
「相場がよいので借りる人がとても多く、貸すための資金が足りない状況です。」
サービスを利用している男性です。
360万円の自己資金で投資資金を借り、合わせて1,800万の投資をしています。
月に支払う利息は数十万円に上りますが、株が上昇傾向にあるうちに少しでも儲けたいと投資を続けているのです。
サービス利用者
「利益を大きくしたいなら、高いリスクを負わねばならない。
人生1度のビッグチャンスを逃したくない。」
とどまる気配のない中国、個人投資家の投資熱。
過熱を気遣う声すら届きそうにありません。