(2015年7月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
7月5日夜、アテネの国会議事堂前のシンタグマ広場で、国民投票の出口調査で反対票が60%を超えたとのニュースを聞いて喜ぶ反緊縮派の人々〔AFPBB News〕
ギリシャの「ノー」の投票結果はアテネのシンタグマ広場で歓喜をもって迎えられた。噴水は赤くライトアップされ、旗が振られ、群衆は愛国的な歌を歌った。ギリシャのアレクシス・チプラス首相は、これは国家の威信に関する投票だと述べ、そのメッセージは国民の胸に響いた。
フリージャーナリストのある若い女性は筆者にこう打ち明けた。
「私は実はイエスに投票しました。でも、心のどこかでギリシャがノーと言ったことを喜んでいます。ギリシャは小さい国だけれど、大きな歴史がある。これは私たちの尊厳の問題なんです」
だが、結果を祝う様子を見ていて、筆者は悪い予感を覚えずにはいられなかった。債権者との新たな合意がすぐにまとまらなければ、ギリシャの銀行は数日内に破綻し、この国は全く別のレベルの経済的困窮を知ることになる。威信と尊厳は、仕事と貯蓄とともに急速に消えてなくなるだろう。
債権者が強硬路線を取る理由
チプラス氏はギリシャの同胞に、欧州からより良い合意を引き出せると語った。だが、それを本当に信じているのだとすれば、欧州連合(EU)の政治を大きく読み誤っている。実際には、ギリシャの債権者は非常に強硬な路線を取るだろう。
債権者はギリシャに怒り、うんざりしている。それ以上に重要なことに、多くの人が、欧州単一通貨の長期的な存続は、各国が共通のルールに従って暮らし、予算を均衡させ、債務を返済しなければならないということをはっきりさせることにかかっていると信じている。
その点を強調するためにギリシャを罰する必要があるのであれば、それも仕方ない、というわけだ。