【北京=永井央紀】中国共産党・政府は7日、日中戦争の発端となった盧溝橋事件から78年に合わせた記念式典を北京郊外の抗日戦争記念館で開いた。昨年の式典で日本を批判した習近平国家主席は出席せず、あいさつに立った党指導部も現在の日中関係には言及しなかった。反日姿勢の抑制の背後には安倍晋三首相が8月に出す戦後70年談話の内容を見極めたいとの思惑がにじむ。
「世界の反ファシスト戦争勝利に重要な貢献を果たした」。党序列5位の劉雲山政治局常務委員は式典のあいさつで、中国が先の大戦での「戦勝国」であることを強調した。反日感情をあおるよりも、中国にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設など新たな国際秩序づくりを担う正当性があるとの訴えに重きを置いた。
日中関係は首相と習主席の2度の首脳会談を経て改善方向にある。経済成長に陰りが見えるなかで日本への期待もあり、反日感情を刺激するような談話でなければ、今の流れを維持したいのが中国の本音だ。
改装した抗日戦争記念館には、昨年11月の首脳会談で首相と習主席が握手する写真が新たに展示された。今年5月に訪中した自民党の二階俊博総務会長らに習主席が関係改善の意欲を示した際の演説写真も加え、背景には「中日友好交流大会」の文字を映しこんだ。
もっとも反日政策をやめたわけではない。記念館には戦時中、日本に強制連行された労働者に関する展示が新設され、南京大虐殺の展示も引き続き大きく扱われている。習主席ら劉氏以外の6人の政治局常務委員は式典とは別の機会に記念館を訪れた。
中国は今年を「抗日・反ファシズム戦勝70周年」と位置づけて、関連するドラマや映画などの放映を全国で展開している。9月3日の抗日戦争勝利記念日には習主席が演説する予定だ。70年談話の内容によっては態度を硬化させる構えを維持し、日本側をけん制している。
日本政府は7日の式典について「日中関係をこれ以上悪化させるつもりはないとの中国側の意思の表れ」(外務省幹部)と一定の評価をしつつ、中国側の動向を引き続き注視していく構えだ。
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