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 首都圏の代表的な海水浴エリアである千葉県の九十九里浜や神奈川県の西湘(せいしょう)海岸などの一部で、砂浜が消えつつある。両県が砂を運んだり、突堤を造ったりして砂浜が戻った所もあるが、海水浴場はこの30年ほどで大幅に減っている。

 「昔は砂浜で野球ができるくらい広かった」。千葉県一宮町のタクシー運転手、岩楯宣雄(いわだてのぶお)さん(66)は数十年前を懐かしむ。海岸が浸食され、砂浜が流出した影響で、かつて町内に3カ所あった海水浴場は現在1カ所。軒を連ねていた海の家も今は4軒が点在するのみだ。

 全長66キロに及ぶ広大な砂浜で知られる九十九里浜。千葉県などによると、かつては海岸線の南北にある太東埼(たいとうさき)と屛風ケ浦の崖が波で削られて土砂が浜に運ばれ、遠浅の海を形成していた。だが1960年代以降、各地に波消しの堤防が築かれたり、河川整備が進められたりすると、潮の流れが変わり、潮にのって運ばれていた土砂が激減して、砂浜が徐々に消失したと推測されている。

 30年ほど前には県内に36カ所あった海水浴場は、ほぼ半減し、今年の開設予定は19カ所。4カ所あった匝瑳(そうさ)市では2010年までに全てが閉鎖した。横芝光町の木戸浜は、陸から波打ち際まで300メートル以上あった砂浜が100メートルほどしかなくなり、波打ち際からすぐに深くなったり、沖合で浅くなったりと海底がデコボコで、安全が確保できないとして11年から閉鎖した。

 九十九里浜はウミガメの産卵地でもあり、浸食が進めば産卵に上陸しなくなる可能性も指摘されている。

 県は砂の流出を防ごうと、コンクリート製の人工岬「ヘッドランド」を88年から造り始めた。浜から沖にかけて長さ約200メートルのT字形の突堤を、約20キロの海岸線に22カ所築いた。09年には浜がやせた区域に砂をまく「養浜」も一部で始め、砂浜が奥行き50メートルにわたり回復した海岸もある。