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新幹線放火事件 トンネル避け緊急停止
7月7日 18時03分

東海道新幹線で男がガソリンをかぶって火をつけ、乗客の女性が巻き込まれて死亡した事件から7日で1週間です。火災が起きたのは東海道新幹線のなかでもトンネルが多い区間で、運転士が列車を排気の悪いトンネルを避けて緊急停止させていたことが、NHKの取材で明らかになりました。
新幹線で火災が起きた新横浜・小田原間は連続して17のトンネルがあり、東海道新幹線でもトンネルが多い区間の1つです。このため、運転士は車内で火災が起きた際は、排気が悪いトンネルを避けて停止させることになっています。
今回は列車が神奈川県内を時速およそ250キロで走行していた午前11時半ごろ、異常を知らせる非常ブザーが押され、運転士はすぐに手動で非常ブレーキをかけたということです。列車は徐々に速度を落としていきますが、このとき列車の先には短い3つのトンネルが連続していました。
運転士はこのままではトンネルの中に停止するおそれがあるとして、2つ目のトンネルの手前であえて列車を加速させたということです。
そして、トンネルを抜ける直前に再度、ブレーキをかけスピードを落とした状態で3つ目のトンネルを抜けて、列車を停止させました。
運転士は通常の訓練で、ブレーキをかけたあとの制動距離やトンネルの位置などを把握しているということで、今回は運転士の技術によってトンネルを避けて停止させることができ、被害の拡大を防いだ形となりました。

専門家「乗務員に火災伝える仕組みを」

国土交通省によりますと、日本の新幹線には合わせて510か所のトンネルがあるということです。
また、12年後に開業を予定しているリニア中央新幹線は、ルートの86%がトンネルを通る計画です。専門家は、仮に火災の発生場所が違っていれば、トンネル内に停止して被害が拡大した可能性があったと指摘しています。
東京理科大学国際火災科学研究科の辻本誠教授は、「今回はたまたま運転台に近い1号車で火災が起きたため運転士がすぐに気付くことができたが、もし、火が出た場所が後方の車両であれば今回のように早く火災に気付き停止させることは難しかった。今回の事件を検証して車内での火災の発生をいち早く乗務員に伝える仕組み作りが必要だ」と話しています。

その時乗務員は

さらに火災発生直後の運転士と車掌の行動も詳しく分かってきました。
新幹線には運転士1人と車掌3人の合わせて4人が乗務していました。運転士は非常ブザーと同時に大きな音が聞こえ、運転席の後ろの小窓から炎のようなものが見えたため、1号車で火災が起きたことを知りました。
そして、列車を緊急停止させたあと、運転台の扉を開けて入り込んでいた煙を換気し、安全を確認したうえで、車外に出たということです。
そして、線路上を歩いて1号車の後方にあるデッキ付近に行き、外からレバーを操作して扉を開け、女性が倒れているのを見つけたということです。
運転士は再び、ハシゴがある運転台から列車内に戻り、1号車の通路で男が倒れているのを見つけ、男の衣服の一部がくすぶっていたことから消火器を使って火を消したということです。
また、8号車の車掌室にいた車掌も非常ブザーで異常に気付き、1号車に行って運転士と共に消火に当たったということです。
一方、4号車で切符の確認をしていた車掌も乗客の声で火災に気付き、1号車に向かいましたが、避難する乗客で混雑していたうえ、大量の煙で1号車には入れず、2号車で乗客を火元から離れた4号車まで誘導したということです。この際、車掌は1号車のデッキに女性が倒れていたことには気付かなかったということです。女性は乗り合わせた看護師や車内販売などを行うパーサーがAEDなどで心肺蘇生を行いましたが助かりませんでした。
また、今回の火災では、発生した大量の煙が火元の1号車以外の車両にも広がりましたが、緊急停止で車両が停電したあと手動で開け閉めをする車両間の扉はいずれも閉められていなかったことも分かりました。
JR東海のマニュアルでは火災が起きた際に消火が確認できない場合は乗務員が扉を閉めることが定められていて、国土交通省は避難誘導や初期消火といった直後の対応について詳しく調べることにしています。

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