こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
ついに始まりました、ドラマ版「デスノート」。同時に、重度のデスノートファンが「傑作でも駄作でも最後までやり抜くこと」をルールに毎週ドラマ版の解説レビューを書く連載企画「週刊デスノーザー」も幕開け。放送前から主にネットではネガキャンが絶えなかった本作だが、実際に放送された1話を観た率直な感想を言うと、始まる前から執拗にネガキャンしていた人の名前をどうやってノートに書こうかと頭を捻っている感じだ。原作へのリスペクトと新しい要素の組み立てがお見事で、気になる点も多々あるものの、概ね大きな期待に応えてくれた出来だったと思う。連載第一回の本記事では、原作との相違点も挙げつつ、ドラマ版1話のレビューを書いていきたい。(以下、本編のネタバレがあります)
週刊デスノーザー【第1話 新世界の神を目指さない男】
【週刊デスノーザー各話リンク】
目次(総括)・創刊号・1話・
【第1話ストーリー】
夜神月(窪田正孝)は、警視庁捜査一課に勤務する父・総一郎(松重豊)と妹・粧裕(藤原令子)と暮らすどこにでもいるような大学生。弥海砂(佐野ひなこ)が所属する「イチゴBERRY」のライブに行く以外は、学業とアルバイトに精を出す日々だ。
ある日、彼の前に高校時代に少年刑務所に入った同級生・佐古田(出合正幸)が現れ、親友の鴨田(柾木玲弥)を恐喝。月は佐古田を止めようとするが、逆に携帯を取り上げられてしまう。その帰り道、空から一冊のノートが舞い落ちてきた。そのノート「Death Note」に“名前を書かれた人間は死ぬ”という説明書きを読んだ月は冗談のつもりで佐古田の名前を書きこむが、翌朝、佐古田が死んだという報せが…!
佐古田の死を大勢の人間が喜んでいる…恐ろしさと同時に奇妙な感覚を味わう月。そんな折、総一郎が10年前に逮捕した犯人が、仮出所中に警察官から銃を奪って民家に立てこもり、総一郎が人質の身代わりとなるという事件が発生する。父のピンチを救うため、捨てるつもりだったデスノートに頼ることになる月。父の命は救ったものの罪悪感にさいなまれる月の前に、デスノートの持ち主である死神・リュークが現れる。「このノートを使うも使わないもお前次第だ。お前の欲は何だ?夜神月」
それから一か月後。月はデスノートの力で凶悪犯を殺害し続け、ネット上で“キラ”と呼ばれる英雄となっていた。状況を重く見たICPO(国際刑事警察機構)からの依頼で、本名も正体も謎に包まれた名探偵・L(山崎賢人)が来日。総一郎たちと協力して捜査に当たることになる。
【今週のピックアップ台詞】
「デスノート、お前が本物なら、あいつを殺してみろっ!」
【トピック】「新世界の神を目指さない男」
ドラマ版「デスノート」の原作との最大の違い、そして一番の魅力は、主人公・夜神月が極端に平凡な大学生という点だ。原作のように、天才がゆえに世の中がつまらなく退屈している訳ではない。「何かに人生かけても、それでお金を稼げても、幸せとは限らない」「そこそこでいい」という台詞にもあったように、“普通”に生きることで“十分”だと考えるキャラクターに変更されている。「最近の若者は仕事に対する出世欲がなく程々にお金を稼げればそれでいい」「最近の若者は車や家を買ったりしない、結婚に対する意欲も低い」と昨今よく言われるが、必要以上に上を目指さない、それに向けて汗をかくことを実は無意識に恥ずかしいと思っているような、「そこそこでいい」という冷めた若者は、とても現代の日本においてリアルだ。上の世代から言わせれば「ハングリーさに欠ける」とでもいうのだろうか。
ドラマ版の夜神月も、そんな若者の一人だ。将来公務員になって区役所勤務を志望する、そんな平凡な学生が拾ったのは、死神・リュークが自身の退屈と気まぐれから人間界に落としたデスノート。これを拾い、彼の人生は転落していくことになる。
原作との最大の違いとして、多くの視聴者がこの1話を観終った時に、どこか「この夜神月はかわいそう」と思わなかっただろうか。最初の殺人は友達を救うため、そして二回目の殺人は家族を救うため。精神的に追い詰められ自殺まで考えるも、リュークから「お前が使わないなら(ノートを)悪い人間に拾わせる」と脅され、促されるままにキラに身を投じていく。原作の月は、デスノートを拾って使った後に五日で4キロ痩せるほどに葛藤したものの、すぐに「新世界の神になる!」と自身の野望を確立した。世界に平和をもたらし、その頂点に自分が立つのだと。しかしドラマ版の月は、彼にとって「仕方ない」と言えてしまう数々の理由の上にキラになった。決して、「神になる」などとは思っていない。自分がキラをやることで、誰かがそれに感謝し、平和が訪れる。それだけで良いと思っている。
ドラマ版の月は、相当に不幸な男だ。ノートを拾い、初めて文字を書いた後も消しゴムで消そうとする(ここで文字が消えないというアレンジがされていたが、ノートが異質なものであるという表現で最高に良い)。同級生を殺した後も吐き気を覚え、ノートを捨てようとする。しかし父親の命が危険になり、妹の狂ったかのような「アイツを殺して!」の懇願もあり、彼はまた“仕方なく”ノートを使う。「デスノート、お前が本物なら、あいつを殺してみろっ!」。その後、人2人を殺した自責の念で自殺まで考えるも、リュークに脅されてしまうのだ。自分がこのままノートを手放せば、“もっと”酷いことになる。ある意味これも、彼の中では“仕方ない”。そうして、彼はいかにも自分で決意したかのように見えて、実は様々な状況に踊らされてキラになった。キラになってしまった、不幸な青年なのだ。
この、原作とのキラになる動機の違いが、ドラマ版の最大の魅力だ。新世界の神など目指さないであろうドラマ版の月が、おそらくこの先Lに翻弄される形でどんどん正義を歪めていき、いつの日か間違った方向に悟るのだろう。「自分は神になれる」、と。その時こそが、夜神月の“完成”なのだ。それまで、このマイナス方向に成長し続ける月の姿を、しっかり見届けていきたい。奇しくも放送開始前に書いた『凡人の月はむしろ良改変!「デスノート」ファンが主張するドラマ版に期待したい4つのポイント』の内容通りの展開になりそうで、今からワクワクが止まらない。
【今週のここが良かった!】
今週放送の第1話で良かった点をひたすらに書き並べていきたい。
まず、冒頭のルールを朗読する月の導入だけで、個人的には「勝った!」という感じだった。あの血の滲むような文字と暗いトーンの発声だけで、一気に引き込まれる。続いて月がミサミサのライブに行っているシーンだが、彼がいわゆる“ガチ”じゃなさそうなのが、これまた「平凡な大学生」に拍車をかけている。ファンのトレードマークらしき赤いシャツも着ていないし、どちらかと言うと同級生に連れられてライブに行っている印象だ。そしてそれを本人は面倒だとは思っていない。この「断れない」「人が良い」感じが、また良いのだ。
高校時代の不良・佐古田に関して、過去のいじめの描写(トイレの便器に顔を突っ込ませていた)をしっかり見せたのも、良い。これは原作の魅上の過去話にも近い部分があり、ここでしっかりいじめの映像を見せたのは効いている。そんな佐古田が居酒屋でビールを飲んだ後に、普通にバイクに乗っている。このナチュラルな飲酒運転には笑ってしまった。どこまでもクズな男だというのが描写されている。月の妹・粧裕を演じる藤原令子も普通に可愛い。後の下着を見せるシーンとか、あざとすぎない感じでそれこそ少年ジャンプレベルのサービスが入っているのも良い塩梅だ。
特筆すべきは、シャーペンの描写だ。人を殺す時(ノートに文字を書く時)に、必ずといっていい程にシャーペンの先がアップで映る。キリ…キリ…と押し出される芯は、どこかナイフの切っ先のようで、注射器の針のようで、これは間違いなく月にとっての「殺し」なのだということを強調している。その切っ先が、ドラマの進行に伴って迷いないものに見えてくる。これはドラマ版ならではの良演出だろう。ぜひ今後も多用してもらいたい。
死んだ佐古田が持っていた自身のスマホを警官が届けてくれるが、この時に「携帯を拾ってくれた」と咄嗟に言い訳したのも良かった。自分が殺してしまった衝撃を感じつつ頭は一応回るという、さりげない地頭の良さを感じる。また、各種ネットの描写がリアルだ。ネット描写は昨今のドラマではよく多用されるが、現実のLINEやFacebook、Twitterやアフィまとめサイトにかなり似せて作っていた。こういう「デジタル小道具」の精度が高いのは、実は結構高得点なのだ。没入感が違ってくる。続けて、父親との確執(仕事で母の死に立ち会えなかった)が原作にプラスされているのも良い。これは後々のドラマ展開に大きく活きてきそう。
父親を人質に取った音原田を殺すために、家に舞い戻った月。ここでゴミ袋からノートを取り出し、おそらくもう何度も読んで覚えているであろうノートのルールを指さし口に出し確認するのがこの上なくリアルで良い。彼の「本当にいいのか?本当にいいんだな?」という自分への問いかけと焦燥が見て取れる。窪田正孝の演技がかなり見事にハマっている。そんな堕ちていく月に対抗するは、山崎賢人が演じるL。警察上層部に「Lさん」と呼ばれていたのには笑ってしまったが、潔癖症でお笑い好きと、原作の猫背・糖分・根暗を排した代わりに色々な属性を持たされている。これらは今後どう活きてくるのか。付き従うワタリが原作の寡黙な執事ではなく、時には悪態までつくような親代わりっぽく描かれているのも好印象だ。新しいLのスマートな我がままっぷりが一層際立っている。
リンド・L・テイラーを殺害した後の月の表情も良い。後悔と言い訳、自己肯定の塊だ。原作だとテイラーを殺した後に「ははは」と高笑いしていた月だが、ドラマ版は半泣きで「お前が悪いんだ…」と責任転嫁を呟く。ここにも両者の違いが顕著だ。そしてラスト、尾行の存在から非日常に足を踏み入れていく月。盛り上がるライブ会場で一人完全真顔というのは序盤との対比であり、原作にもあった(バクマンで言うところの)“シリアスな笑い”に満ちている。ミサミサの「救われました」が最後の“仕方ない”となり彼を後押しし、この時、Lとの対決を遂に自覚する。
ラストシーン、ニアと人形のメロ。二重人格で腹話術といった設定が付与されているようだが、今回は顔見せのみ。とはいえ、「人形」というのは原作でも「指人形」という形で重要なアイテムのひとつだったし、「二人ならLに並べる、二人ならLを超せる」をまた別の形で表現しようとしているのだろう。これもまた良い改変ポイントと思えてならない。
【今週のここがダメだった!】
続いて、個人的に今週「う〜ん」と感じたポイントを書き並べていきたい。
まず、全体的に急ぎ足だ。月の最初の殺人と良心の呵責、父を救うための音原田殺害、もうちょっと全体に「溜め」が欲しかった。せっかく大筋は良いのに、どこか少し軽くなってしまっている。とはいえ、初回に30分拡大の枠を押さえ、月の堕落のスタートを描きつつLとの対決開始まで持って行くには、これ以上削れる部分が無かったのも事実。ここは正直仕方ないかもしれない。
一番ダメ出ししたいのは、ミサミサこと佐野ひなこの演技力。モデルに演技力を求めるのも酷かもしれないが、もうちょっとどうにかして欲しい。ビジュアルは可愛いし、いい感じで「ウザさ」も兼ね備えているので、ミサ役として決してハマっていない訳ではないと思っている。今後、レム登場や拘束のくだりでどういった演技を見せてくるか、正直不安が残る。また、端々で描写が甘い。佐古田が「明日30万持ってこい」と月の友人を脅すが、「いつどこにお金を持って行くのか」、全く言わない。こういう細かい点を蔑ろにしてはいけないのだ。そこは「明日同じ時間にあの居酒屋に来い」と一言、言わせるべきだろう。こういう「痒いところに手が届く」描写で気を抜いてはいけない。
また、リンド・L・テイラーの生中継キラ煽りで、Lが肉声だったのもいただけない。そこは加工音声でいくべきだろう。名前も顔も見せないのだから、声ももちろん変えるべきだ。Lを演じる山崎賢人の1話における見せ場なので肉声で演じさせたい意図も分かるが(実際その声の演技は結構良かったが)、だからこそリアル指向で加工音声だろう。惜しい。
そして今回思い知ったのは、原作は改めて「巧い」ということ。というのも、まず、テイラー公開殺人においてLがなぜ日本の関東を最初の放送区域に選んだのか、ドラマでは明確な説明が無い。タブレットで殺人がそこに集中しているのは映されたが、ここは原作通り「小さな事件で見逃されているがキラの最初の犯行は小さな通り魔(音原田の事件)だ」とLに言わせるべきだ。また、月が「Lが学生の線を睨んでいる」という情報を得た後に殺人時刻を意図的にばらけさせていたが、これでは「警察関係者にキラがいる(警察から情報を得られる立場の人間である)」という情報をみすみす提供してしまっただけである。
実はここが原作の巧い部分で、原作の月は、意図的に「犯人は学生」という情報を警察に与えていた。そしてそれが相手に伝わり、月の知るところになると、一転、殺人の時間を30分ごとにばらけさせた。これは月のLへの挑発であり、挑戦状だった。原作「デスノート」がとにかく巧いのは、月の好戦的な性格だ。月がもし「自らLを殺してやる」と考えずひたすら無反応に留まっていれば、あそこまで熾烈な戦いは生まれなかった。月は、Lを殺すためには自分をある程度まで疑わせ、表舞台に引っ張り出し、近づこうと画策していた。彼はギリギリの戦いに勝つために、「疑われる」ことを自ら選んだ。だからこそ、「犯人は学生」という情報を意図的に与え、それを察したLに対してまた挑発を叩きつけた。「こちらは一歩先だぞ、お前も舞台に上がれよ」、と。
ドラマ版の「犯人は学生?→それを月が知る→殺人時刻をばらけさせる」は一見原作と同じ流れだが、この一連の流れの“前”に「Lを倒す」と決意したのが原作であり、“後”にそう誓ったのがドラマ版だ。つまりドラマ版の月は、自分への疑いの目を逸らそうとして逆に情報を与えてしまった。「平凡」ゆえの愚策だろう。ただこれは、1話のラストに明確にLをライバル視して「これは戦いだ」と決意する流れをやりたかったのだろうし、それにより生じた“作劇のズレ”のようにも思える。
【来週の見所は?】
来週の見所は、なんといっても月 vs FBI捜査官だろう。原作では自演バスジャックから尾行する捜査官(レイ・ペンバー)の名を割り出し、彼を操り地下鉄に誘導。彼自身にノートに仲間の捜査官の名前を書かせ、滞在中の捜査官を一気に殺した。その際に、自分を尾行していた捜査官が実行犯とバレないように、巧妙に条件を設定してかく乱した。あの序盤でも見事なトリックだった月の策略が、ドラマではどう料理されているのか。
おそらく来週はまだニアは本格的には絡んでこないだろうし、むしろレイ・ペンバーがLに銃口を向けるようなシーンまで予告に映っており、期待と不安が募る。ノートの条件設定で「Lを殺した後に自殺」と書いても実行できるはずがないからだ。さて、どうなることやら…。
ネットでは、「設定を変えるなら夜神月やらのキャラの名前も変えて欲しかった」という意見を多く見かけるが、私としてはそっちの方が嫌だ。「デスノート」は「キラ」の物語であり、「キラ」は「夜神月」以外にあり得ない。例えば「田中太郎」や「朝日月」が「キラ」を名乗るなんて、こちらの方がよっぽど“ズレ”ている。新世界の神を目指さない平凡な男でも、彼が「夜神月」であって、「キラ」なのだ。だからこそ、「デスノート」なのである。
【今週のスコア】
85点
【週刊デスノーザー各話リンク】
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【過去記事】
・「アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン」は駄作でも傑作でもない
・それでも君はTwitterに映画の感想を呟く
・いじめ制度web漫画から考える「いじめは絶対に無くせない」という現実
・2015年上半期 新作映画マイベスト5は「狂気」のラインナップ!(全23作品レビュー&ランキング)
個人的にはうまく原作の設定を活かしつつ、現代にアレンジしている点はすごく好きだけど、いっそのことライトでなくてもいーのかなと思った。
よくあるパラレルワールド的な見方をすれば十分楽しめるけど、なんかライト以外の人の性格も違うからよくも悪くも「別世界」って感じがした。
あと、毎回時計の指針が12からカウントが入るのに笑ってしまった笑
なんにせよ、週刊デスノーザー楽しみにしてまーす(^-^)/
まあ、いっそのこと「ライト」じゃなくても、と思っちゃうのはオタクだけで、おそらく今回のドラマ版はオタクに向けては作ってないと思うw
今の若い子はデスノートちゃんと読んだ事ないだろうしね…。