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 東京・池袋の西武池袋本店にある書店「リブロ池袋本店」が20日に閉店する。1980年代に「セゾン文化」の一翼を担った書店との別れを惜しむ作家や漫画家が同店地下1階の柱に寄せ書きし、多くの客が足を止めている。最後のブックフェアを眺めて涙を浮かべる客もいるという。

 「いつまでもぼくの学校です。ありがとう」。かつて百貨店内にあった洋美術書店に勤めたフリーライターの永江朗さんは、柱にそう書き込んだ。作家の高橋源一郎さんや社会学者の上野千鶴子さんの直筆メッセージや、漫画家の江口寿史さん、吾妻ひでおさんらのイラストもある。

 寄せ書きが始まったのは先月12日。「ツレがうつになりまして。」の作者である細川貂々(てんてん)さんが最初で、現在30人以上のサインが集まっている。今月1日にはインテル・ミラノの長友佑都選手が来店。「感謝!」というコメントとサインに携帯電話のカメラをかざす若い客の姿が目立つ。

 同店では、現役の店員や過去に勤務したスタッフら120人が「今も心に残るこの一冊」を紹介するブックフェアも開催中。「一番売りたかった本」「自分で選んで仕入れ、並べた本が売れた時はうれしかった」など思い出をつづったポップが1冊ごとに付く。熱のこもった言葉が効いたのか、開始2日で売り切れた本もあるという。

 マネジャーの辻山良雄さんは「こんなに多くの人に愛された店だったのかと改めて感じます。歴代スタッフのフェアを企画して、この場所がたくさんの人のかけがえのない記憶をつないでいたと分かった。胸が熱くなります」と話した。

 同店は池袋周辺に移転先を探しているが、まだ決まっていない。跡地には8月初旬に三省堂書店池袋本店が開店する予定だ。(竹内誠人)