蚊を絶滅させると、どう困る? 地球上で一番やっかいな虫・蚊にまつわるエトセトラ
地球上で一番やっかいな虫と聞かれて、あなたは何を思い浮かべますか? 暑い季節、プ〜ンと飛び回る蚊は、イライラさせられる回数でいえば圧倒的な嫌われ者なのではないでしょうか。世界中で血を吸い、痒みや病気をバラ撒き続ける蚊とは、一体どのような虫なのでしょうか? 蚊が人の血を吸う仕組みや、蚊取り線香や蚊帳、駆除のための薬品などさまざまな対策をしながらも、人類が蚊を絶滅させるには至っていない理由などを解説します。(TED-Edより)
- スピーカー
- Rose Eveleth(ローズ・エベレス) 氏
地球上で一番最悪な虫・蚊
ローズ・エベレス氏:地球上で一番最悪な虫は何でしょうか? アブだと言う人もいれば、スズメバチだと言う人もいるかもしれませんが、大半の人は蚊だと答えると思います。
ブンブン飛ぶ音、噛まれること、痒くなること……蚊は世界中で最もひどく嫌われている虫の1つなのです。
アラスカでは、蚊の大群があまりに大きくなり過ぎ、トナカイを窒息させることもあるぐらいです。そして、毎年数百万人もの人たちが蚊から発生する病気で亡くなっています。蚊は昔から人々の悩みの種でした。蚊は1億年以上前から生息しているのです。そしてその間、人間を含む多種多様な生き物と共に、蚊も進化してきたのです。
世界中には、実に千種類以上もの蚊が存在しま すが、全ての蚊に共通する油断できない性質が「血を吸う」ことです。蚊は血を吸うことが、とてもとても上手です。
蚊はどうやって血を吸うのか
彼らはこうして血を吸うのです。
まず蚊は何かに止まり、その犠牲者の皮膚に消毒薬のように機能する唾をたっぷりと塗ります。そうすることで皮膚を麻痺させ、私たちが蚊の攻撃に気がつかないようにするのです。ちなみに、これが皮膚を痒くさせ、赤く腫れさせる原因なのですが。
それから蚊は鋸歯状の顎を使い、口先で血管を探り回れるように、私たちの皮膚に小さな穴を開けます。そうして血管を探し当てられた幸運な寄生虫は、自分の体重の2〜3倍もの血を吸うのです。
それは私たちにとっては心地よいものではありません。実は、人間は蚊のことがあまりに嫌い過ぎて、世界中で蚊を退治するために、シトロネラ蝋燭や殺虫剤、業務用の害虫駆除剤など何十億ドルもの大金がつぎ込まれているのです。
しかし、蚊は鬱陶しいだけではなく、命取りになることもあるのです。蚊は、マラリアから黄熱病、西ナイルウイルス、デング熱まで何でも伝染させてしまいます。世界中で、毎年数百万人もの人たちが蚊から発生する病気で亡くなっています。しかもそれは人間だけに及ばず、馬、犬、猫なども蚊を介して病気になってしまうのです。
蚊を絶滅させられない理由とは?
さて、この虫がこんなに卑劣ならば、絶滅させてしまえばいいと思いませんか? 私たち人間は、今までも色々な種類の動物を絶滅させてきました。しかしこれは、そこまで単純ではないのです。蚊を絶滅させることは、蛙や魚や鳥などたくさんの生き物の食料源を無くしてしまうことになります。蚊なしでは植物も花粉媒介者を失ってしまうのです。
しかし科学者の中には、蚊は実はそこまで重要な存在ではないと言う人もいます。蚊が絶滅すれば、他の虫が蚊の役割を果たすようになり、マラリアの死亡率もぐっと低くなるだろうと言うのです。
問題なのは、もし私たちが蚊を絶滅させたら、その後何が起こるのか、誰も知らないということです。
蚊よりももっと良い生き物が、蚊の代わりになるかもしれないし、もっと酷い生き物が代わりになるかもしれないのです。ここで問いたいのは、「果たしてそのリスクを負いたいか?」ということです。